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甘い恋人
「そ、れは………」
「………………ダメ?」
子犬のような濡れた目で見上げられ和希が言葉を濁すと目の中の水の膜が増えゆらりと揺れた。
ボディーソープのボトルを手に取るとポンプを押し直接壮史の身体に垂らしてやる。
冷たっと声をあげる壮史を無視し、手のひら全体を身体にくっつけるようにしながら身体を洗っていく。
「前は自分でやれよ」
意外にもはーいと素直な返事が返ってきて和希はほっと肩を撫で下ろした。
まだエロいおっさんは降臨してこないらしい。
このまま寝てくれればいいのだが。
泡だらけの身体をシャワーで流し、出るぞと声を掛けた和希の腕を壮史が掴む。
ぎくりと身体を硬くした和希の首筋に壮史の頭が擦り付けられる。
離れたくなかっただけか。
思わずふっと噴き出すように笑った和希は壮史の腕を引いて風呂を出、
タオルで壮史の頭や身体を拭いてやる。
身体を屈め目を閉じて大人しく拭かれる壮史に和希はふと思い出し問いかけた。
「なぁ、壮史」
「んー?」
「好き、ってもっと言われたい?」
「言わせるのが好きだからいい」
「言わせるの?」
「セックスの時に」
そう言って和希を見上げる壮史の顔は明らかに欲情して見えた。
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