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溢れる家族愛
原田家から帰っても頭の中を巡るのは豪に何て言って切り出したらいいか、そのことばかり。
やり慣れてる家事は意識しなくとも身体は動く。
だが、考え込んだ顔をしながら無言で歩き回る和希を壮史が掴まえる。
「え、え?何?」
「なんかあった?」
後ろから和希の腹に腕を回し抱きしめながら壮史が口を和希の耳元に寄せる。
「いや、別に…」
「俺といるのに考え事してるのが気に入らない」
「…壮史のことだけ年がら年中考えてろって?」
「そう、24時間365日俺のことだけでいい」
「ばーか………」
笑った和希の顎を長い指が持ち上げ壮史の鼻が頬に擦り付けられる。
そのまま合わせるだけのキスをすると一瞬で和希の中は壮史でいっぱいになる。
そのことを悟られまいと和希は腹に回された腕を引き剥がしにかかるが、壮史の方が一枚上手だった。
「和希、も一回」
和希の身体の正面を自分に向けると目を閉じ顔を少し傾けてみせる。
和希の手が頬に触れその後柔らかい唇が唇に合わせられた。
舌先で和希の唇をぺろりと舐めると薄く唇が開けられるのももうわかっている。
開けられた口にわざと舌を入れずにいると焦れた和希の舌がそっと自分の口の中に入ってくるのも好きだった。
遠慮がちに伺うように絡めてくる舌を強引に吸ってしまえば甘い吐息が和希の鼻から抜け壮史に届く。
いつまでも減ることもなく増え続ける壮史からの独占欲を和希はまるでわかっていない。
時々思い知らせてやりたくなるのは恋人として当然だろう。
壮史の服を掴む和希の手の力が強くなるのを感じながら壮史は密かに笑みを浮かべた。
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