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溢れる家族愛
翌日から和希は豪の観察をしてみる。
あからさまな変化と言えば、髪型だった。
聞けば彬さんの店でカットモデルをやった時に切ってもらったと言った。
もっさりと伸びていた前よりは遥かにかっこよく豪によく似合っている。
背が高く身体つきも男らしい。
優しく家族思いの豪。
豪にもし好きな子がいるならどうか成就してほしいと切に願う。
応援したい気持ちはあるが、回りが手を出せば上手くいかないこともある。
豪から何も話してこないうちは探ったり聞き出したりもしたくない。
和希は海からの催促の連絡を適当に濁しながら豪から話してくるのを待つことにした。
ある日豪の想い人はあっけなく判明した。
土曜日の昼前、朝からバイトに来ていた和希に西園寺が出掛ける準備をしながら声をかける。
「銀行寄ってから昼飯買ってくるわ」
「俺、肉がいい」
「お前いっつも肉じゃねーか。そんな節約生活してんのかよ」
和希は肉が大好物だ。
だが、壮史は魚介類が好物だ。
そのため週三は魚料理にしているせいか、食べられそうな時は肉を欲してしまう。
不満はないのだ。
美味いと顔を綻ばせながら食べる壮史を見れば和希は満足だった。
「お前がくるとたいていあそこの弁当屋…」
言いかけて西園寺が止まる。
「そういや豪が彬ちゃんとこよく顔出してんの知ってっか?」
「豪が?何しに?」
「いやー………」
西園寺がニヤリと笑う。
「彬ちゃんに狙われちゃってたり?」
「え、マジで!?」
驚いた顔の和希を見て西園寺がニヤリとまた笑った。
「俺からは言えねーから今日の帰りにでも覗いて来いよ」
ニヤニヤ顔の西園寺に気付きもせず和希はうんと大きく首を縦に下ろした。
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