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溢れる家族愛

月曜日の豪は元気がなかった。 美容院が定休日で赤坂に会えないからだ。 朝からため息を繰り返している。 和希は何も言わず綺麗に刈り揃えられた豪の襟足をじょりじょりと撫でてやると、擽ったそうに首を竦める豪と笑い合った。 講義が終わり豪と2人で駅に向かっていると突然の豪雨がきた。 慌てて走ったが、叩きつけるような雨に2人ともびしょ濡れになってしまう。 駅にも濡れた人達が溢れる。 濡れた服が身体に張り付き少しずつ体温を奪う。 和希が思わず身体を震わせると豪が家に来なよと声をかけてくれた。 豪の家のある駅で降り、駅から豪の家まで濡れて行こうか、傘を買うか迷い駅構内の売店を見るが突然の豪雨に傘を買う人達で溢れ返っている。 「走るか」 もうどうせずぶ濡れなんだ。 和希がそう言うと豪もうんと頷く。 駅から出ようという時、和希は雨宿りしている中に知った顔を見つけ豪の腕を掴んだ。 「豪、あの人」 「風ちゃん!!」 和希が言い終わらない内に豪が赤坂に向かって走り出していた。

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