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溢れる家族愛
赤坂も2人と同じように濡れ寒そうに自分の腕を擦っていた。
豪は着ていた上着をそっと赤坂の肩にかけてやると赤坂の細い手首を掴む。
「俺の家、すぐそこだから、そこまで走れますか」
豪の顔と掴まれた手首とを見てから赤坂ははい、と頷いた。
和希は赤坂の荷物を持ち、先に走り出す。
「戸川っ、鍵!」
その声に振り向くと弧を描いて光る物が飛んできた。
鍵を受け取ると和希はまた走り出した。
傘を持たない人達が駅に向かって走って来るのを流し見しながら和希は豪の家へと急いだ。
鍵で中に入り、お邪魔しますと挨拶をしてから濡れた靴と靴下を脱いで上がる。
風呂場に行き、湯を張るスイッチを押してから脱衣場からタオルを数枚取り玄関に向かった。
リビングにいたのか海がのそっと出てきてお帰り、と声をかけてきたのにただいまと笑顔を返す。
「海も濡れた?」
「いや、ギリセーフだった」
「何か服貸して、あとで風呂入るから」
「今入れば?湯、溜めてんの?」
風呂場をちらっと覗くと服取ってくる、と言って海が2階へ消える。
そこへ玄関が開き豪と赤坂がずぶ濡れで入ってきた。
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