406 / 412
溢れる家族愛
リビングに戻ると海は赤坂に宿題を見てもらっていて、圭はソファでうとうとしていて、
凛はキッチンで夕飯の支度を始めているようだった。
この賑やかさの中での宿題やうたた寝が原田家の日常なんだなと和希は羨ましく思う。
和希の子供の頃の戸川家はいつも静かだった。
会話もなく物音もなく、和希の呼吸する微かな音だけがする冷たい部屋。
喋ることどころか、声の出し方すら忘れてしまいそうな部屋にいた和希を麻衣や壮史が引き摺り出してくれたのだ。
きっと豪は赤坂をその時の和希のような体験をさせたくないんだ。
一人の時間があることは悪いことではない。
でも一人で居すぎると他の人との距離感が掴めなくなる、
頼れなくなる、甘えられなくなる。
何もかもを一人でやり、背負い込み、自分一人で解決しようとしてしまうようになる。
そういう時期が和希にもあった。
相澤家のみんなも父親も全てを拒絶し、閉じこもっていた時期があったのだ。
赤坂が和希と同じようになるかどうかはわからないが、豪は赤坂をこの暖かい家族でいつでも迎えてやりたいと思ったんだろうなと和希は思った。
ともだちにシェアしよう!