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溢れる家族愛
「豪に注目!」
原田家特有のこれが和希は大好きだった。
家族が多いだけにあちこちで会話すると大事なことが伝わらない。
みんなに聞いて欲しい時はこうやってみんなに呼びかけるのだ。
一斉にみんなが豪を見ている。
「風ちゃんはお祖父ちゃんお祖母ちゃんと離れて一人暮らしです。
たまに家にきて一緒にご飯を食べたりしてもいいでしょうか!
豪の、だ、大事なお友達だから、お願いします!」
みんなが手を上げてはーいと返事をしたあと拍手をする。
これが賛成、もしくはわかりました、の合図。
いつの間にかお風呂から上がっていた咲も含めてみんながはーいと手を上げ拍手していた。
海を除いて。
「海さん」
赤坂が海に向き直る。
「私は豪さんが好きです。
でも今やらなければならないことが沢山あって、豪さんのことに夢中になっている訳にはいきません。
お付き合いという形にはなれませんが、豪さんとずっと繋がっていたいです。
それでは…ダメでしょうか」
「海、俺はそれでもいいんだ。風ちゃんとの繋がりがあれば、それでいいんだ」
2人の言葉を聞いた海はゆっくりと右手を上げてはーいと返事をし、拍手した。
その様子を見ていた和希は何故か泣きそうになり、唇を強く噛んだ。
少し前進した2人。
嬉しそうに笑い合う豪と赤坂を見て、和希は腰を上げた。
壮史に会いたくて堪らなくなった………
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