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溢れる家族愛
右手を凛と咲が、左腕を圭が掴む。
帰ると言い挨拶をした和希だったが、泣き出しそうな顔で引き止める圭たちに眉をさげた。
「こら、困らせたらダメだろ」
お兄ちゃんの顔になった豪が三人の頭を撫で宥める。
「またすぐ来てくれるって、な?」
豪の問に和希がうんと頷くと渋々感を隠そうともせず三人が手を離した。
「和希を待ってるヤツがいるんだよ、帰してやらないと」
豪の言葉に凛、咲、圭と順番に頭を撫でていた和希が顔を上げる。
今、豪が名前で呼んだ……?
「引き止めて悪かった、助かった」
豪の耳が赤い。
気のせいではない。
「気を付けて帰れよ、……和希」
「………ん」
擽ったいような痒いような胸を押さえ和希は原田家を後にする。
スコールのような豪雨は止んでいたが、道路のあちこちにでかい水溜りができている。
濡れるのも気にせずバシャバシャと水溜りを踏みながら歩き出した和希は気がつけば走り出していた。
気が急く。
早く壮史に会いたい。
身体の中から溢れだしてきそうな気持ちを上手く伝えられる気はしない。
でも、今の自分のまま壮史に会いたかった。
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