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第27話 里帰り(3)

 それから数日間は、夏期講習に行き、終わったら一人でブラブラしたり、友達と遊んだり、と、可もなく不可もなくって感じで過ぎた。夏期講習が一区切りつくと、お母さんの実家に行って、久しぶりにいとこたちと会ったりもした。でも、お母さんの実家は同じ都内だから、日帰りだし、あんまり特別な感じはしない。お父さんのほうのおばあちゃん家は、もっとずっと田舎にあって、川遊びなんかもできるんだけど、今年はお父さんの休みが合わないとかで、そっちへの帰省はしないようだ。  8月に入ってすぐ、クラスの友達のカケルから、家に遊びに来ない?という誘いがあった。行ってみたら、ほかにも2人、同じクラスの奴らがいた。ゲームでもすんのかなあと思っていたら、カケルは「今日はすげえいいもんを見つけたから、みんなを呼んだんだ」と言い出した。  僕以外の2人が「イエーイ」とハイタッチをした。え、「すげえいいもの」が何か、分かったの? 分からないのは僕だけみたい。ポカンとしていたら、カケルは僕の鼻先に何かを突き出した。  「制服美少女 ママにナイショの輪姦学校」  ……えっと、これは、いわゆる、アダルトビデオ。僕の目の前には制服姿の女の人がパンツを見せて笑ってる写真。 「父ちゃんの本棚で見つけた。違うカバーとかつけてて、奥にあったからアヤシイと思ったんだ。ほかにも何本かあった。」とカケル。「カケルのお父さん、JK好きかよ。あぶねー。」とアツシ。これも同級生。 「今日家族の人いないの?」とハルト。同じく同級生。 「母ちゃんは妹連れて、妹の友達家族とディズニー行ってて、夜まで帰ってこない。父ちゃんも遅いし。」 「ばっちりじゃん。見よ見よ。」ハルトが前のめりになって言う。  僕たちはリビングの大画面テレビでそれを見た。ストーリーは一応あって、女子高生が林間学校に行く設定らしい。バスの中で先生にスカートの中に手を入れられたり、お風呂の時、間違えて混浴に入っちゃって知らないおじさんたちにいろいろされたり、それを知った同級生の男子にも脅されて宿泊所の部屋でいろいろされたり。いろいろされる女の子は最初1人だったけど、最後はその子の友達、という設定の子も出てきて、5人ぐらいになってた。残念ながら、キレイな人は1人もいない。これだったら、都倉先生のほうがキレイだ。いや、涼矢さんだって、この人たちよりは整ってる。主役の人だけはまあまあ可愛いけど、「女子高生」には絶対見えない。  なんてことを思いつつ、僕はこの手のものをちゃんと見るのは初めてで、衝撃的で、ドキドキした。  ドキドキして、まあ、Hな意味で興奮した場面もないではないのだけれど、画面の中でやってることがエスカレートしていくにつれて、ドキドキするより、あまりに生々しくて、気持ち悪くなっていた。それで、画面よりも、カケルたちを見てた。ちょうど僕はテレビの真ん前に陣取ったみんなと違い、一歩下がったところにあるソファに座っていて、みんなを後ろから見る格好になってたから、画面ではなくみんなを観察していても不自然には思われない。  カケルも、アツシも、ハルトも、目をぎらぎらさせて画面をガン見している。ハルトなんて、完全に背中を丸めてズボンの前のほうを押さえていて、どういう状態なのは丸わかりだ。  さっきまで一緒にバカをやっていた友達のそんな姿に、僕は複雑な思いだ。すげえわかる!だよな!とも思う。僕だって、男だし。でも、なんか、汚いっていうか。そういう気持ちが、消えない。正直に言うと、僕は自分でそういうことをしたことがない。夢精の経験が数回あっただけ。その時どんな夢だったかも覚えてない。Hなものを見れば勃起もするけど、それを自分で出す、というところまでしたことがない。

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