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第29話 里帰り(5)

 履き終わって、ポテチとかコーラとか飲み食いしていた時、カケルが言い出した。 「な、知ってる? C組のケントとミヤビの話。」 「つきあってんだろ、あいつら。」 「そうそう、それで、ヤっちゃったらしいよ、もう。」 「マジか。」 「あ、それ俺も聞いた。ミヤビんち、母子家庭でさ、夜も親がいないことが多いんだって。それで。」 「ミヤビんちで?」 「らしいよ。」 「じゃあもうミヤビ処女じゃないんだな。」 「ヤバイよな。」 「ミヤビのチュープリ回ってきたよ、顔隠してたけど。」ハルトがスマホでトークの履歴をチェックしている。「これこれ。相手ケントだろ、これ。」 「あー、そだな、ケントだ。」 「チューどころじゃねえってことだよな。」 「羨ましい。」 「そうか? ミヤビ、ブスじゃん。胸もないし。」 「ブスでも貧乳でもいいよ、この際。」 「それってさ。」僕も会話に割り込む。「ミヤビが言ってんの? もうヤッちゃったって。」 「俺が聞いたのは、マルからで、あいつケントと仲いいじゃん。で、ケントからそう聞いたって。」 「俺、実は別アカで女子のふりして、何人か学校の女子フォローしてんだけど。」と、ハルトが言い出した。ハルトはスマホとかパソコンとか、詳しいんだ。「たぶんミヤビの裏アカかなっての見つけて。ミヤビもそれっぽいこと、結構呟いてんだよね。彼氏が泊まりに来てるとか、このまま一緒に登校するの幸せとか、頭沸いてるようなやつ。」 「マージで―。ミヤビ、泊まらせてんのかよ、エッロ。」 「それも1回だけじゃないらしいよ。夏休みになってからも、そんなこと書いてたし。」 「じゃあ今頃ヤリまくりなんじゃね?」 「ヤバいじゃん、エロすぎ。」  僕も一緒にそんな会話をしながら、違うことを考えていた。彼氏が泊まりに来るってことは、イコール「エッロ」と言われるようなことをする、と考えるのが当たり前なんだな、って。  ……そう、僕は帰省初日に、自分の実家じゃなくてわざわざ涼矢さんちに泊まった先生のことを、思い出していた。そして、2人も「エッロ」と言われるようなことをしてたのかな、なんてことを考え始めてしまった。  僕はその瞬間に、さっきみんなで見ていたAVよりも強い刺激を感じてしまい、つまり、勃ってしまった。ヤバイ、今はみんなもう落ち着いちゃってんのに、僕だけ。  僕は、想像上の涼矢さんと先生を、ミヤビとケントに置き換えた。さっき口の悪い誰かが「ブス」と言っていたミヤビだが、僕もその評価を否定できない。ただ、ある意味小動物のような愛くるしさはある顔だと思う。目が小っちゃくて、出っ歯で、良く笑う子だ。ケントも、眉毛を不自然に整えていて、鼻が低くて、たらこ唇で、イケメンとは言えない。あれならポン太さんのほうがマシだ。ただ、ケントは格闘技を習っていてがっちりとした体格で、背も高いから、遠目に見ればカッコいいかもしれない。って、僕だって人の容姿にとやかく言える立場じゃない。ただ、今は僕のコレを落ち着かせるためには、ミヤビとケントは充分役に立った。  そんなこんなで、僕たちはカケルのお父さん所蔵のAVをもう1本見た。次のは家庭教師の女子大生に誘惑される男子高校生の話だった。この女子大生役の人は結構美人で、男子高校生役の人も、ホストみたいな髪型してるし、脱いだらタトゥーとかしてて絶対高校生じゃないだろうって感じだったけど、まあまあイケメンで、さっきのに比べると、やることもあんまり生々しくなかったから、僕はこっちのほうが好きだなあ、と思った。みんなは物足りなさそうだったけど。

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