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第44話 エミリの話(4)

「ねえ、そろそろパレードの場所取りしようよ。」エミリが言った。 「パレート中のほうがアトラクション空いてるけど?」と先生。僕もこっち派だな。 「あたしはパレードが一番好きなんだもん。」 「ふうん。どの辺で見たいとか、あるの?」先生はあっさりとエミリの要望を聞くことにしたみたいだ。さっきまであんなにやりあってたのに。誰にでも優しいって、こういうところなのかな、なるほど。 「僕はパレードよりアトラクがいい。」と僕は言ってみた。こういうわがまま、あんまり僕らしくない、と自分でも思う。でも、先生がどうするのか試してみたかったんだ。 「じゃあ、明生は俺と何か乗りに行く?」と涼矢さんが言った。 「そうだな、そうしろよ。パレードまでまだ1時間あるからさ、タイミングが合えばパレードも見に来ればいいんじゃない? 場所とったら、連絡するから。」 「OK。」先生と涼矢さんは当たり前のように、そんな風に話を進めた。 「え、だったらアトラクション優先でいいよ。パレードは、立ち見でちょっと見えればいいから。」エミリが言った。 ……僕のわがままでみんなに気を使わせてしまった。 「いいよ、パレード見なよ。俺は明生と2人で、楽しんで来るから。」涼矢さんは僕の肩を抱いた。先生はスタスタと向かって来ると、その手をブンッとはねのけた。 「セクハラ。」不機嫌そうに言う先生。  涼矢さんに「明生、嫌だった?」と聞かれたから「別に。」と答えた。 「本件はセクハラにはあたりません。」涼矢さんは真顔で言った。 「嫌だったらセクハラ?」と僕は涼矢さんに聞いた。 「そう。された側が性的に不愉快と感じたら。」 「でも、友達と肩組んだりとか、普通にするじゃん。」 「そこがセクハラかどうかの判断の難しいところで。」 「おい、話をすりかえるな。」と先生が割って入ってきた。 「涼矢ってそんなしちめんどくさい性格だったっけ?」エミリも参加してきた。 「そうなんだよ、こいつ、面倒くせえんだよ。高校の時は、あんましゃべらなかったから、よくわかんなかったけど。」 「あんたも因果な男に惚れたもんね。」 「おまえが言うな。」  なんやかんや言って、エミリと先生はめちゃくちゃ仲が良いんだな。 「ねえ。」僕はエミリに向かって言った。「僕、やっぱりパレード見る。みんなで見よう。」 「やだ、変な気使わないでよ。」 「使ってないよ。夏バージョンはまだ見たことないから、見たくなった。パレード見るなら僕のお勧めの場所あるんだけど。」 「え、どこどこ。」  僕とエミリが歩きだすと、後ろを先生たちがついてきた。  僕とエミリはレジャーシートを持ってきていた。2枚並べて敷いたら、4人座るのにちょうどいい広さだ。 「準備がいいな。」とシートにあぐらをかいて座りながら、先生が言った。 「基本でしょ。和樹、初ディズニー?」 「修学旅行が初めてで、今日が2度目。」 「涼矢は?」 「小学生の時に何回か来たけど、シート敷いてパレードを見たことはないな。」 「……ホテルから見てたとか言いそうだな。」 「うん。」 「出たよ、お坊ちゃんめ。」 「親の趣味につきあわされてただけ。友達とワイワイやってる人たちのほうが楽しそうだなあっていつも思ってたよ。」 「じゃあ修学旅行は楽しかったんじゃないの。」 「俺の班、柳瀬とか宮野とか、いつものあの顔ぶれだったからね。柳瀬は財布なくしてカンパさせられたとか、宮野が他高生ナンパして断られて恥ずかしかったとか、そういうことしか覚えてないな。修学旅行委員の仕事もあって、一足早く宿に戻らなきゃならなかったし。」 「涼矢、委員だったんだ? 和樹は誰と一緒に回ったの?」 「え、あ、うーん……。」先生は言いづらそうにしている。 「ああ、綾乃か。……あれ? 違うよね。うちのガッコ、修学旅行は2年の秋だもんね、まだ綾乃とつきあう前よね?」 綾乃、というのはどうも先生の元カノらしいね。 「綾乃じゃない。部長とか。」 「奏多? それから? 2人だけじゃないでしょ?」 「あと、何人か、クラスの奴とか。部活の奴とか。」 「奏多と、シンスケと、カイトの班。ってことになってるけど、実際はヤマギシさんと回ってたよな?」涼矢さんが言った。

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