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第6話

「今日、最もアンラッキーなアナタは蠍座のアナタ! でも、がっかりしないで!! ラッキーパーソンは執事さん。その人が幸運を運んできてくれるよ!!」  梅木原のラッキーアイテムが穴の空いたビニール傘だった日から10日近くが経とうとしていた時、梅木原の耳にはそんな声が聞こえた。 「執事……」  日常を生きていれば、なかなかお目にかかれないだろうラッキーパーソン。梅木原の脳内には執事その人ではないが、ある人物が浮かんでいた。  その人物は 「まさかな……」  梅木原はある人物を思い浮かべると、テレビの電源を切る。それから、学校へ向かう。  無月高等学校。  今日も香井や他の舎弟が声を張り上げてバカな事を言い、笑っている。それに梅木原は適当に相槌を打って、窘めたり、窘めるだけではなくて、褒めたりしていた。  占いではアンラッキーと評された1日だが、なにもそれが悪い訳ではない。劣っている訳でもない。  だが、雨宮との触れ合い、それは全く違っていた。住む世界や価値観は違うが、舎弟や家族、先公とは違って、対等に渡り合える。そんな関係になれるのではないかと梅木原は感じていた。  梅木原は香井の言葉に相槌を打ち、ふっと窓に視線を向けようとした。 「そうだな……ん、何だ?」  まさかかったるい数学の授業をサボって、部室棟の空き部屋で時間を潰していたのがバレたのだろうか。ドタドタと足音が聞こえてくる。  そして、梅木原のいる部屋のドアが開いた。

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