11 / 12
第11話
「あ、でも、これと茶まで受け取ったら、もう傘の件は貸し借りなしって事になるんだろうな」
「え?」
「結構、あんたと話すっていうか、あんたが話しているの好きだったけどな」
梅木原は畳から立ち上がると、茶菓の後の抹茶を飲まずに、にじり口から出ていこうとする。
「梅木原さん!」
「あの傘を拾った日。あんた、ダチとして出会えれば、楽しかったかも知れないって言ってたけど、俺もそうだったのかもな。あんたの話を聞いて、俺も何かしら話して。拳を交わしたりして」
「うめき……」
「だから、もし、それが社交辞令じゃねぇならまたあの執事を寄越せ。今度はあいつらも気絶させねぇし、執事が闘えなくなったら、俺があんたのところへ送り届けてやるよ。で、その時はまた茶をいれてくれや」
それは
1人のヤンキーと1人の御曹司の再会を意味していた。
「はははは、折笠君はそうそう負けないと思いますけど、面白そうですね。分かりました。折笠君には悪いですが、是非、そうします」
しとしとと降っていた雨は少し細い筋を残していたが、傘がなくとも、梅木原は帰る事ができそうだった。
本当は雨宮の口から「また来てください」という言葉を引き出す事も、梅木原が「また来ても良いか?」という言葉でもって問う事もできた筈だった。
だが、梅木原にはそれはできないし、できそうにはなかった。
ともだちにシェアしよう!