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第1話 (下)
義人はベッドの上で小さく身じろぎ、謎の人物を精一杯睨み付ける。
すると、謎の人物も……身じろいだ。
「随分と冷静だな」
義人の声ではない声が、病室に響く。
義人にはその声の主が、一人しか思い付かない。
目の前に立っている、黒ずくめの不審者だ。
義人のものより低く、けれどハッキリとした声に、不審者の性別が男なんだと確信を得る。
だが、性別が分かったところで何も解決していない。
謎の青年はゆっくりと義人の座っているベッドに近付き、立ち止まった。
ゆっくりと右手を伸ばし、人差し指で義人を指す。
「汝は一ヶ月後……死ぬぞ」
先程、医師に言われたことと全く同じ内容を、謎の青年も宣言する。
義人は目を丸くして、謎の青年を見上げた。
「……知って、ます……けど」
発言内容には、驚かない。
義人が驚いたのは、どうして見ず知らずの他人が自分の余命を知っているのか、という点だ。
謎の青年と思しき人物は、目を丸くしている義人を見下ろす。
「我の発言と、先刻までここに居た人間の発言を同等に受け止められては、不愉快だな」
謎の青年は、義人と医師の会話を知っている様子だ。
不満げな声で文句を言われても、義人にはどうにもできない。
「貴方は、誰ですか?」
義人は至極当然の問いを、呟いた。
青年は義人の問いに、短く答える。
「我は【デュラハン】。死を予言する存在だ」
にわかには信じられない発言に、義人は目を丸くすることしかできなかった。
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