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第2話 (下)
恐れられ、嫌忌される存在……デュラハンとは、そういうものなのだから。
「ねぇ、デュラさん」
「何だ」
「キスして?」
義人の言葉に、金色の瞳が揺れる。
初めてデュラハンに会ったあの日から、義人はまるで恋人にするような甘えを、デュラハンに向けていた。
それだけ、義人はデュラハンを心底愛している。
義人の発言を受けたデュラハンは、瞳を閉じて……愚痴のように、呟く。
「生産性の無いことを何故好むのか、理解に苦しむ」
「ダメ?」
義人は覗き込むように、小首を傾げる。
デュラハンは再度、義人を見つめた。そして、握られていない方の手でマフラーを掴み、上へ持ち上げる。
「拒絶したところで、諦めるわけでもないだろう」
「うんっ!」
義人がデュラハンに好意を寄せているのは、話し相手ができて嬉しいから……理由はそれだけではない。
相手が男でも女でも、ましては人ならざる存在でも……義人が想いを深めていくのは、デュラハンの言動が理由だ。
――デュラハンも、義人を恋人のように扱う。
――だから、尚更義人は惹かれていくのだ。
デュラハンの顔が近付き、義人は期待から目を閉じる。
「ん……っ」
デュラハンの唇が重ねられ、義人は吐息を漏らした。
決して巧いわけではないキスでも、義人は満たされる。
同情か、戯れか……デュラハンの真意を知る術なんて、義人は持っていない。
けれど義人にとって、そんなものは些事だ。甘えさせてくれるのも、手を繋いでキスをしてくれるのも……理由なんて、どうでもいい。
傍に誰かが居てくれる……それだけで、義人は満足なのだ。
(梅雨……まだ、明けないな)
デュラハンと何度も唇を重ね、ぼんやりと義人はそんなことを考える。
開け放たれた窓から入り込む雨音を、心地いいと思ったのは初めてだった。
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