8 / 12

第3話 (下)

 デュラハンは義人の手を握り、マフラーを少しだけずらして、義人に口付ける。  少し冷えた唇が、熱に浮かされた義人の体には心地いい。義人はグローブをはめたままの手を、精一杯握り返す。 「んっ……は、ぁ……っ」  義人の口から、甘い吐息が漏れ出る。  初めてキスをした日より、デュラハンのキスは巧くなっていた。そんな変化にさえ、義人の胸はくすぐられる。  デュラハンは、薄く開いた義人の唇に舌を差し込む。  自分と比べるとやはり冷たいデュラハンの舌が、義人の口内を蹂躙した。歯列をなぞり、舌を突いて絡ませるよう強要してくる。  義人は精一杯、デュラハンのキスに応じた。 (気持ちいい……っ)  冷えた唇だけじゃなく、舌遣いにも義人は快楽を得る。  伸ばした足を動かして、義人は体の異変に気付く。 (勃ってる……)  もうじき死ぬと分かっているのに、義人の体は貪欲だ。  子孫を残せるわけでも、意味があるわけでもないのに……男性器が熱を持ち始めた。  デュラハンの唇が離れて、手も離れそうになる。  義人は、デュラハンの手を必死に握り続けた。 「デュラさん……っ」  デュラハンが不思議そうに、金色の瞳で義人を見つめる。手を繋いで、キスをして……いつもなら、それで終わりだったからだ。  デュラハンが手を離そうとしない義人に疑問を抱いているのは、薄々察している。  義人はデュラハンを、熱っぽい視線で見つめた。 「……俺のこと、抱いてほしい……っ」  デュラハンも、繁殖する。やり方は、人間と同じ……いつの日だったかデュラハンが、そう言っていた。  つまり……人間と全く同じ方法で繁殖行為をするのなら、デュラハンと人間もセックスができる、ということだ。  義人の突飛な要求に、デュラハンの手がピクリと動く。 「何を言っている? 気でも触れたか?」 「違うの……っ」  義人は力無く、首を横に振った。  繋いでいた手を自身の下半身へ導くと、デュラハンが驚いたように目を見開く。 「デュラさんと、一つに……なりたい」 「その体では無理だ」 「ヤダ……っ」  泣き出しそうな顔で、義人はデュラハンを見上げた。 「最期だから……お願い……っ」  デュラハンは金色の瞳を、苦痛に満ちた様子で細める。  暫く逡巡した後……デュラハンの手が、義人の下半身を撫でた。

ともだちにシェアしよう!