9 / 12
第4話【体温】 (上) *
初めての行為にも、義人の体は恐怖心を抱かなかった。
「あ、んっ! はぁ、あ……ッ!」
体が重い。呼吸も苦しくて、勝手に涙が溢れる。
義人の体には、性行為をできるだけの余裕も余力も無いのだ。
それでも義人は、必死にデュラハンにしがみつく。
「もっと、動いて……あッ!」
ただでさえ衰弱した体だというのに、本来他者を受け入れる器官ではないところで、デュラハンの逸物を受け止めている。辛くないわけ、ないのだ。
苦しさに涙が出ているのに、体が震えているのに……義人は、デュラハンと離れようとはしない。
デュラハンも、義人を必死に抱き締める。
「ヨシヒト……ッ」
個体に名前を付けないデュラハンが、ぎこちなく義人の名前を呼ぶ。名前を呼ぶという行為自体に、慣れていないのだ。
長く伸びた銀髪が、義人の目の前で揺れた。
フードもマフラーも外し、デュラハンは義人に素顔を見せている。
長い銀髪に、涼やかな金色の瞳……首には、生々しい傷跡のようなものが刻まれていた。
頭部に触れようと手を伸ばすと、デュラハンはその手を握る。
「この首は繋がっていない。断面など、見たくないだろう?」
デュラハンは、自身の姿を見た者の目を潰す。それ程、姿を見られることを嫌がる……ネットで調べた伝承を、義人は思い出す。
自分にだけ姿を見せて、名前を呼んで伴侶のように愛してもらえている……その事実が、義人にとっては夢のように嬉しかった。
「あ、ぁんッ! ん、デュラ、さ……ッ!」
人間の平熱よりも低いであろうデュラハンの体温が、上がっている。義人の中に深く挿入されている逸物が、普段の体温からは想像できない程、熱い。
体を揺すられる度、義人は得たことのない快感に身を震わせた。
自分で弄ったことのない箇所に、同性の逸物を挿入されて……普通なら、痛みや不快感が生じるものだろう。
そう感じない程、デュラハンを信頼しているし、愛しているんだと……自身の深すぎる愛情に、義人は心の中で笑う。
ともだちにシェアしよう!