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第4話【体温】 (上) *

 初めての行為にも、義人の体は恐怖心を抱かなかった。 「あ、んっ! はぁ、あ……ッ!」  体が重い。呼吸も苦しくて、勝手に涙が溢れる。  義人の体には、性行為をできるだけの余裕も余力も無いのだ。  それでも義人は、必死にデュラハンにしがみつく。 「もっと、動いて……あッ!」  ただでさえ衰弱した体だというのに、本来他者を受け入れる器官ではないところで、デュラハンの逸物を受け止めている。辛くないわけ、ないのだ。  苦しさに涙が出ているのに、体が震えているのに……義人は、デュラハンと離れようとはしない。  デュラハンも、義人を必死に抱き締める。 「ヨシヒト……ッ」  個体に名前を付けないデュラハンが、ぎこちなく義人の名前を呼ぶ。名前を呼ぶという行為自体に、慣れていないのだ。  長く伸びた銀髪が、義人の目の前で揺れた。  フードもマフラーも外し、デュラハンは義人に素顔を見せている。  長い銀髪に、涼やかな金色の瞳……首には、生々しい傷跡のようなものが刻まれていた。  頭部に触れようと手を伸ばすと、デュラハンはその手を握る。 「この首は繋がっていない。断面など、見たくないだろう?」  デュラハンは、自身の姿を見た者の目を潰す。それ程、姿を見られることを嫌がる……ネットで調べた伝承を、義人は思い出す。  自分にだけ姿を見せて、名前を呼んで伴侶のように愛してもらえている……その事実が、義人にとっては夢のように嬉しかった。 「あ、ぁんッ! ん、デュラ、さ……ッ!」  人間の平熱よりも低いであろうデュラハンの体温が、上がっている。義人の中に深く挿入されている逸物が、普段の体温からは想像できない程、熱い。  体を揺すられる度、義人は得たことのない快感に身を震わせた。  自分で弄ったことのない箇所に、同性の逸物を挿入されて……普通なら、痛みや不快感が生じるものだろう。  そう感じない程、デュラハンを信頼しているし、愛しているんだと……自身の深すぎる愛情に、義人は心の中で笑う。

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