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第2話

「ラブホなんて久しぶりー!   ここのラブホ部屋がオシャレだし綺麗だから好きなんだよね。  まあ、その分値が張るんだけどさ。あ、お会計ありがとね!」 ラブホテルなんて縁がない尚宏は慣れない空間で萎縮しまくっていた。 しかも想像とは違って、ラブホテルは清潔感があって小洒落ていた。 そんな尚宏の緊張を解すべく青年はマシンガントークを続ける。 「でもここのラブホの飯はいまいちなんだよなー。  だから、頼まないほうがいいんだけど、小腹とか空いてない? 大丈夫?」 「お腹減ってないから」 「そう? よかったー。まあ、運動の前にご飯食べても辛いだけだしね。  あ、でも俺喉が渇いたから紅茶飲むけどどうする? コーヒーもあるよ?」  慣れた動作でポットに水を汲み、スイッチを入れる。 「俺はコーヒーで」 「りょーかい。砂糖ひとさじ?」 「……ありがとう」 「そういえば、名前なんて呼べばいい?」 「于原尚宏……」 「フルネームかぁ〜」 行きずりの相手にフルネームを名乗るなんて、と内心笑ったが、その生真面目さが逆に面白いと思った。 「じゃあ、俺もね。俺は藍原笑也。  セックスしてる時は笑也って呼んでいいからね? 俺も尚宏って言うし」 「う……うん………」  縮こまる尚宏の緊張をほぐすように笑也は笑う。 「えー、なに? キンチョーしてる? ま、いいやっ。  じゃあさっさとシャワー浴びに行こっか?」 「いっ、一緒にシャワー浴びるのか?」 「え、うん。時間の節約にもなるし。時間も2時間しかないんだよ?」  え、と尚宏は驚いた。  セックスをするのに二時間じゃ足りないのか。  AVだったら、どうだったっけ。  でも、あれって色々シチュエーションが変わるしな……。 「足りなくなったら延長するからいいよ」 「そう? お会計してくれたのは尚宏だしね。尚宏がそういうんだったらそれでいいや。  俺は予定もないし、ゆっくりできるよ。それなら、シャワー先に浴びる? 後に浴びる?」 「じゃあ先で……」    熱いシャワーを浴びていると、思考がやっと落ち着き始めた。  尚宏は自分が今ラブホテルにいることをやっと実感した。 (俺、今ラブホに居るんだな……)  よく考えてみれば、旅行でもないのに、家以外でシャワーを浴びるなんて初めてだった。  そして、今からエッチするんだ。初めて会った人と。しかも相手はΩ。  それまで縁の外と決めつけていたαとΩの知識を尚宏は必死で思い出す。  発情期中のΩはαをヒートさせて、その時のエッチはすごく気持ちいい。  ああ、でも、あいつは別に発情期って訳じゃなくて、通常時なんだから別にαやβとエッチするときとそんな変わらないだろう。  いや、αとβとエッチしたことがあるわけじゃないし、比較してもしょうがないんだけど。  はあ、と溜息をつく。  なんだか自分が自分じゃないみたいな気がして頰が熱い。  体の奥が熱を持っていて、気持ちが悪い。  シャワーの温度を低くして、ゆっくりと考え直す。  家族の顔が思い浮かんで、背徳感が寄せてくる。  逃げたくなった。逃げよう。今なら、まだ大丈夫だ。きっと謝り倒せば。  そう思っていたのに、シャワーからあがって笑也の姿を見た瞬間、逃げる気が失せた。  ただベッドに寝転がっているだけなのに、笑也のしどけない姿に堪らない愛おしさを感じてしまったのだ。 「あ、シャワー終わった?   あれ、服着ちゃったの? すぐエッチするんだから服着る意味ないじゃん。  まあ、脱がせ甲斐があっていいけどさー。  じゃあ次、俺入ってくるからっ! ちゃんと髪の毛乾かしとけよ〜!」  そう言って笑也は尚宏と入れ替わり、シャワー室に入っていった。  お洒落な空間で、一人取り残される尚宏。  所在なく、尚宏はベッドの端に腰掛ける。  ベッドの中央の、笑也の体重分凹んだ部分を見ると、どうしようもなく興奮してしまう。 (いよいよか……)  自分はうまくヤれるだろうか。  とりあえず妊娠させないように、コンドームをつけることだけは忘れないようにしよう。  絶対に。あ、でもあいつ、遊んでそうだしピルとか飲んでるのかも。  っていうか、エッチってどうやるんだったっけ? (………AVでも見るか……)  テレビを付けてAVを見始める尚宏。  男にキスをされる女の子。しかも舌を出して絡めあうようなイヤらしいキスだ。 (あ、そっか。まずキスからだ……。ディープキス………)  そして女の子が男のものをフェラチオし始める。 (あれ? これ俺がするの? 俺がさせるの?)  どっちなんだろう。  女の子、つまりは挿れられる方がしているんだから、俺がさせなきゃなのか?  でも、男に自分のものを舐めさせるなんて変な気分だ。  ああ、でも。あいつ経験豊富そうだし、すすんで舐めてくれそうだ。  

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