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第3話
そんなことを悶々と考えていたら、いきなり後ろから抱きつかれた。
「何? なんでAVとか見ちゃってんの?」
そう言いながら、笑也は尚宏の服を脱がせつつ、尚宏にキスをした。
そしてそのまま尚宏の口内を無遠慮に貪る。
キスだけでも初めてなのに、初めてがこんな生々しいディープキスだなんて。
尚宏は頭がクラクラした。
「ねえ、フェラしてよ?」
なんで俺が、とは思ったが、気まぐれな女王様のような雰囲気を持った笑也には逆らえないと思った。男の逸物を舐めることに躊躇いはあったが、ただの器官だと尚宏は自分に言い聞かせた。逸物を包んでいるのはただの皮膚。そう、ただの皮膚なんだ。
だから、笑也のものに口を付けた時、思っていた以上の不快感はなかった。
「あれ? フェラするの初めて? ……あんまり上手くないね。
ただ舐めるだけじゃなくて、俺を気持ち良くさせるように舐めてよ。
エッチってお互いを気持ち良くさせようって思うホーシシンってやつが大切だと思うからさ」
「……………じゃあ、お前も俺のを舐めろよ……」
「そうだね。お手本を見せてあげるよ」
そういって笑也は尚宏のものを口に含んだ。
そして弄ぶように舌先で執拗に鈴口を責める。それから歯を立てないように、甘く噛む。
舌で撫でる。優しく時には激しくと緩急をつけて吸う。
「…………っあぁぁあああ、おいっ、止めろよっ………!!」
笑也のフェラチオが気持ちよすぎて、尚宏は身体がおかしくなりそうだった。
身体の外側が敏感になって、全部蕩けて、触れられるだけで頭が狂いそうになる。
これ以上変になりたくない。気持ちよくなるのが怖い。
尚宏は笑也の頭を掴んで、必死に自分のそこから剥がそうとするが、体勢が悪いのかうまく力が入らず、為す術がなく笑也の好きなようにされるだけだった。
「どう? 俺のテク? すごいでしょ?」
「っすごい………! すごすぎてヤバい! もうイっちゃいそうだから……!」
「あらら、どんだけ堪え性がないだよ尚宏は。じゃあ、そろそろヤっちゃうね?」
そういって笑也は尚宏の窄まりにちょんと触れる。
そして解すように、中に指を挿れていく。
「お前、何してるんだよ!? そこは関係ねぇーだろ?」
「今からここに挿れるんだから、ちゃんと解しておかないと。それとも、痛い方が好み?」
「ちょっと、まてよ! なんで俺が挿れられる側なんだよ!? 俺はαだぞ?!」
「はあ、何言ってんの?」
いやいやいやいや。
何だこれは? 何かがおかしい。
「Ωがαに突っ込んだって、妊娠しないだろ。意味ねぇよ!」
大体、αの俺は妊娠できないし。
「別に交尾したくてエッチするんじゃないよ? 気持ちいいからエッチするんでしょ?
そもそも俺に挿れるなんてダメに決まってるでしょ。俺、愛人契約結んでる奴いるしさ。さすがに他の奴に挿れさせるのはあいつもいい気がしないだろうし。
そもそももう番もいるから他の奴に挿れられてるもそんなに気持ち良くなれないしさ」
ほら、と笑也は首の後ろを見せる。
そこにはαにつけられた歯型があった。それはもう番がいるということの証だ。
「は、はぁ? で、でもお前が誘ったんじゃないか……!」
「挿れられるのなんて散々ヤってるんだし、俺は俺が挿れるエッチをしたいから尚宏のことを誘ったんだよ。αで童貞だって言ってたし、挿れられる方が好きなのかなって思ってさ。でもさ、あんたエッチ自体、ヤったことないんだね。
まあ、それならさ。断然ここでヤられた方がいいんじゃないの?
俺としても勝手の分からない童貞にヤられるとか最悪だし、童貞捨てる時の練習になるでしょ」
それに、と笑也は続ける。
「大体、そんな顔して挿れたいです、とか無理でしょ。自分の顔、鏡で見てみたら? 物欲しそうな顔してるよ? ほら、言ってみなよ。尚宏の本心をさ。挿れられたいんでしょ?」
「……そんなわけないだろ…………」
「ふーん。まあ確かにαなんだから、そんなこと口が裂けても言えないよね。
まあ、いっか。二人でラブホに来ちゃったんだし、多少の行き違いはあったにせよ、もう同意の上でヤってるようなもんだしね。つーか今からヤるって時に男が四の五の言ってんじゃねーよ」
それまでの笑也に不釣り合いな強い口調だった。尚宏は背筋がぞくりとした。
「い”っ………………い”…………」
痛いと泣き叫ぶような真似はしたくなかった。それはαとしての矜持か男としての見栄か。予め指で解されていたとはいえ、指とはまるで体積の異なるそれを遠慮なしに打ち込まれ、異物感と嫌悪感が尚宏を襲う。
笑也の抽送にしばらく耐えていたら身体が慣れてきたのか、痛みが段々と無くなった。ただし、快感はない。こんな行為が気持ちいいものだとは思わない。だけど、笑也は気持ちよく善がっている。
穴と棒を抜き差しするだけで何で人間は快感を得られるんだろう?
生物学的本能? でも、αの男は妊娠しない。なら、この行為に何の意味があるんだろう?
笑也の顔を見る。見目のいい顔が気持ち良さそうに快感に酔いしれていた。
何故だろう。尚宏は自分が笑也のその顔を見ていることに優越感を覚えた。
俺だけではないと知っているけれど、それでも笑也のこの顔を見られる者は少ない。
ハァ、ハァと笑也の吐息がかかる。
雰囲気に酔い始めているのかもしれない。
段々と自分も気持ちよくなってきた気がする。
「あぁ………あっ………あぁ……………………」
女みたいに喘いでみると、女みたいな気分になって身体の奥底が疼いてきた。
何も考えられなくなってくる。気持ちいい。頭が空っぽになって馬鹿みたいになる。
身体の奥底から快感の奔流が溢れ出てきて、我慢ができなくなって、尚宏は笑也に力強くしがみつくように抱きついた。
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