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憂鬱

 窓の外はどんよりと薄暗い。  小さな会議室の空気を、一台の扇風機が左右に首を回しかき回してる。  長い沈黙。社長は資料に目を落としたまま動かない。  また……雨だ。  気分が沈む。できることなら、盛大なため息を吐きたい。  僕はいつから雨をこんなにも鬱陶しく思うようになったんだろう。 「うーん、……わかりまりした。少し考えてみるよ。いやね? 商品の良さは十分わかったよ。しかし、うちとしても安い買い物ではないからね。じっくり検討した上でまた連絡するということで」 「はい。よろしくお願いします」 「雨、また降ってきたね。営業さんはたいへんだ。頑張ってね」  気持ちいい返事ができなかったのを気にしたのか、社長は僕の腕をポンポンと叩き、励ますように言った。 「ありがとうございます。では失礼します」  一礼して会議室を出る。すれ違う従業員の人達にも会釈を繰り返し、建物から出た。傘立てから自分の傘を引き抜き、空を見上げる。どうせ降るなら涼しくなってもいいだろうに。  ワイシャツの襟に指を入れ、わずかな隙間から空気を取り込む努力をする。 「ふー」  社長の反応はどっちとも取れないものだった。  朝の天気予報で、今日の不快指数が八十三パーセントと言っていた。雨だけでも鬱陶しいのに、その上にこの蒸し暑さ。本当に不快だ。不快指数とはよく言ったものだ。八十を超えると実に九十三パーセントの人が不快に感じるらしい。カビも大増殖だろう。今朝が食べた食パンの袋をちゃんと留めてきたか少し気になった。  シャツの中でいくつも汗が流れる感覚がする。こうなってくると汗なのか蒸気による水滴なのかもわからない。どこかへ避難しないと精神的にやられてしまいそうだ。

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