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第19話

その日は突然訪れた。 確かに、尚之は 『当面、夕飯が作れなくなる』 そんなことを言っていた。 けれど、母が病気がちだった為、 家事を手伝ってきた身としては なんの問題もなかったので、 気にも止めていなかった。 「……ただいま〜」 帰宅時はいつも、誰もいない。 誰もいないはずの玄関で投げやりな言葉を 呟くが、その声は思いも寄らぬ方向から 現れた。 「勝己くん、おかえりなさい。」 迎えてくれたのは、尚之が何故か 「忙しい時期に入る」 ということで、何故か家に来ている。 そんなことを言い出した翌日から 祖母や母、僕や将人が親しんだ家に 居座っている。はっきり言って、 存在自体は、気にくわない。 得体の知れない女ではあったが、 尚之と距離を取るのには丁度いい。 20代後半くらいの若い女性で、 なにより、尚之を狙っている様子だった。 そこが一番の『好都合』な部分だ。 あと数年もすれば、大学を理由に 自分も自立してこの家を 出ていくつもりでもいたので、 尚之が幸せになるのなら、と目の前で 『羽南(はな)』さんと名乗る女性とは 仲良くしていくつもりだ。 『大学受験を考えてるから』 と、尚之がいないのを良いことに、 食後は部屋に閉じこもった。 食事を一緒に取らなくて良い、というのが なによりも救いだった。 帰宅後、尚之は何度も接触を計っていることは わかっていたが、羽南がいることによって 強制的に部屋に入ってくることはなかった。 一度、羽南らしき女性の喘ぎ声が 聞こえて来たことがあった。 尚之が羽南を抱いていることは確実だ。 それなら遠慮することなく、尚之がいる日に 女の子を呼んで、こっちもセックスしてやる、 と思った。 都合よく、先日、彼女が出来たばかりだ。 夕食を羽南と一緒に夕食を摂ると、羽南は 嬉しそうに2人で女子トークをしていた。 それを横目にうまく関係が出来上がってくれれば良いと微笑ましく思っていた。 夕食後、彼女と部屋でいい雰囲気になり、 彼女を押し倒すと、彼女も乗り気だったので、 そのまま躰を繋げた。 その時に尚之が帰宅していることは、 もちろん知っていた。 尚之も女性を抱いてる身なのだから、 なんの遠慮もなく、童貞を捨てた。 膣の中はとても暖かく柔らかくペニスに 絡みついてきて、気持ちよかった…… 終わったあとも、彼女は余韻に浸り、 キスを要求してきたり、甘えてきたりと その仕草が可愛くて、後戯のつもりが そのまま愛撫になり、尽きることなく 一晩中愛し合った。 おかげで、コンドーム1箱は余裕で なくなってしまった。 早朝、彼女を駅まで送り届けると、 『またね』 と笑顔で手を振る彼女に手を振り返し 電車を見送った。 彼女が朝帰りしたあと、待っていたのは、 鬼の形相で部屋で待っていた尚之の姿だった。

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