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第20話

「いったい、なんのつもりかな?」 怒りを隠しもせずに、性急に詰め寄る。 「好きにしていい、って言ったのは 義父さんじゃじゃないの? 自分だって女連れ込んで抱いてるじゃん。 そのままが1番平和だよ羽南さんだって 喜んでるし。」 目線を合わせられないが、正直に話した。 「まだ、女が抱けるとは、生優しすぎたかな。男なしではいられない躰にしてたつもりだったが、女で勃つとはね……で?女とのセックスで満足したのか?それだけでは物足りなかったんじゃないのか?」 「……したよ。すごい気持ち良かった。 柔らかいし、いい匂いがしたし、 相手が感じてる姿に興奮するって、 こういうことなんだ、ってわかったし。 僕はやっぱり男なんだな、って思ったよ。 僕は抱く側であって、抱かれる側じゃない!」 尚之は途中で口を挟んでくることは 無かったが、冷たい目線で僕の方を 見ていることはわかっていた。 目の隅にそれが写っている。が、 突如にしてその口角が上がる…… 「……ほう……?まだ、メス堕ちしてないか。私にそれを見せつけるように一晩中セックスに溺れるとはね……面白い挑戦状だな。 私は羽南を愛していないし、 おまえに不便がないように家政婦として 雇っていただけだ。 勘違いしてるようだったが、 1度抱けば諦める、と言うから 抱いてやったが、それを勘違いしたのかな? 嫉妬心から反撃するとは 可愛いところもあるじゃないか。 ……勝己……私から逃げられると思うなよ?」 ――尚之は狂ってる……!! 「女なんか抱けない躰にしてやるからな」 酷く怒った様子で、腕を掴まれて勝己はベッドへ投げ出された。 「20歳までは自由だと言ったのは 義父さんじゃないか!!」 「確かに言ったな。でも、女を相手にして、 妊娠させて逃げようなんて考えは 捨ててもらわないとな。 おまえは俺のものだと、 それだけは覚えておけ。 それが出来ないなら、 子供ができない躰にしてやる」 眸の奥に欲情の欠片が見える…… いや、見えた気がした。 セックスの時だけ、『私』が『俺』に 口調が変わるからだ。 確かにGW中はひたすら抱かれて喘がされた。 男を知ってる躰になってしまった。 彼女とのセックスに充足感を感じたか? と、聞かれれば、最初こそ物足りなさは あったが、何度も射精すれば それも収まり普通にセックスを 満喫できたのも事実だ。 それが普通……だと勝己は思う。 だからこそ、尚之に理想を告げた。 「僕は普通の家庭を築きたいだけだよ!! 僕らの境遇みたいじゃなくて、 普通に両親と血の繋がった子供がいる家庭に 憧れてるだけじゃないか!!」 押し倒されている状態だが、 力一杯に尚之を睨みあげた。 が、尚之はそれをものともせず 「……普通?それを求めてどうする? 絶対に幸せになれる保証がどこにあるんだ? 実際、おまえの母親は2度の離婚をしてる。 普通の幸せを求めた結果がそれだろう? あの女の唯一良かったところは おまえを産んだことだ。 おまえの父親もそうだ。離婚の原因は アイツだろ。その浮気癖は両親に似たのか?」 皮肉のように(なじ)られ、切なくなった。 『浮気癖』なんかじゃない…… 普通の恋愛をしただけだ…… こんな状態の方が普通じゃないんだ…… 隙を見せてはいけない…… そう思ってるのに、眸に涙が浮かぶ 「私はおまえを愛してる。男だろうが 女だろうがくれてやる気はない。 ……なんだ?泣いてるのか?覚えておけ そんなのはな、逆に男を煽るだけだ。 俺はおまえをもっと『啼かせ』たいよ……」 尚之はそう言うと、首筋に口唇を落とした

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