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第13話

目が覚めると、自分の部屋のベッドの上で、頭痛が酷く、心()しか熱っぽい気もした。何より身体中が痛い。 ぼぉー、とした頭は完全に思考停止状態だったのだが、徐々にうっすらとした記憶がよみがえってくる。 けれど、サラサラとしたシーツは、汗や体液塗れになっていた昨夜とは違う、新しいものに替えられているし、パジャマも着ている。 パンツも穿いているけれど、肛門付近の違和感は拭えない。むず痒くも微かに痛い。 夜中のうちに身体は清められ、中まで綺麗に処理されてるようだった。 『……淫乱……随分美味そうに俺のを食ってるじゃないか……思った通り素質十分だ…… 女なんか抱けない身体にしてやるよ……あぁ、俺も気持ちイイよ…俺だけの勝己……』 昨夜の囁きが甦ってくる。そう言って、その後揺すられながらも、口唇や舌で翻弄された。 それだけなのに背筋がゾクゾクっと震えてしまう。身体を丸めて自分を抱き込むように布団に潜る。 ――どうしよう……身体が疼く…… 童貞を捨ててもいないのに、処女(?)を先に奪われるなんて……しかも、育ての親に。 普段は自分のことを『私』と言うのに、セックスの時は『俺』になっていた。言葉はいつもは柔らかいのに乱暴になっていた…… 知らないことだらけで、追い上げられて、乱れて叫んで……女のように喘いだ。 『女なんか抱けない身体にしてやるよ……』 それになんの意味があるのだろう?尚之は実際に祖母と婚姻関係があったのだから、身体の関係もあったはずだ。 胸も膣もない、まだ、成長途中の未熟で男らしくもなく、かといって女でもなく、触り心地良さには無縁な男の躰のどこに興味を示したのか、が、全く分からなかった。 女の体の方が柔らかいし、生産性だってある。 ――だけど、そんなことを考えるだけで、胸が痛むのは何故……?なんで、こんなに泣きたい気持ちになるの? 痛む胸の上のパジャマを掻きむしるように握る。ズキズキと心も体も痛かった。 コンコン 部屋のドアがノックされた。けれど、胸が痛くて声が出ない。寝ているとみなしたのか、ドアが静かに開いた気配がした。 「……勝己?」 優しい声色だが、尚之だ。そのまま固まってしまって身(じろ)ぐことすら出来ずにいた。 布団の小さな膨らみを見て、そこに勝己がいることは確信してるだろう。 「…勝己?寝てるのか?」 布団を静かに捲られる。目を見開いて小さく丸まりながら、ガタガタと震えている勝己を尚之は優しい眸で見つめてから、背中を優しく摩って混乱を落ち着かせようとしていた。 「……身体は大丈夫か?少し熱い気がするね。熱を測ってみようか……」 昨夜のことは無かったかのように、普段通りに接してくる。が、すぐに『ピッ』という音がした。その場を離れることなく、準備万端だったという事だ。 身体を起こされ、腋の下に体温計を挟まれた。しばらくして、測り終えた時の電子音が鳴る。 「……熱があるね。少し頭を冷やそうか」 ――いやいやいやいや……頭を冷やすのはあんたの方だろう? 声にならないツッコミを入れつつ、アイス枕の用意をしに部屋を出ていく尚之の背中を目で追った。その背中が見えなくなると、熱に心が弱っているのか、心細さを感じた。 ――なんだろう……?このモヤモヤした感じ… 開けっ放しのドアの向こうから、忙しくゴム製の枕へと氷をザラザラと入れる音と、水が流し込まれる音が聞こえてきた。熱は何度あったんだろう? バタバタと歩き回る音がしてたかと思うと、今度は階段を上がってくる音がしたかと思えば、その足音は確実に勝己に近づいてきていた。 その音に安心感を覚えるのは何故だろう? 「勝己、頭をあげるよ?」 柔らかい声と共に、ゆっくりと頭を持ち上げられて、アイス枕をサッと差し込み頭を下ろしてもらうと、タオル越しのひんやりとした心地良さに眠気が襲ってくる。 そっと頭を撫でられて、その心地良さに、うっすらと瞼を上げ、眠気と戦いながら、尚之を見上げた。 「一日中看病してあげたいけど、私は外せない会議があるから、仕事に行ってくるよ。 学校には私から連絡しておくから大丈夫だよ? お粥はテーブルに置いておくから、食べれるようなら食べなさい。無理なら、水分補給だけは忘れないようにね。今は難しそうだから、飲ませてあげるから……」 矢継ぎ早に要件を述べ、尚之は数本あるブドウ糖成分と同じ飲料水のペットボトルを1本手に取ると、クイッと(あお)って口付けてきた。 冷たい液体がゆっくりと口の中に流れ込む。それを少量ずつゆっくりと、コクコクと喉に流し込むと、ずいぶんと喉が渇いていたんだ、ということに気づく。 「……もっと……」 熱にうかされていた。無意識に強請る。 「……ふふっ、上手に強請れるじゃないか」 一瞬、不意をつかれた、という表情をしてから、尚之はニヤリと嗤った。結局、500㎖のペットボトル一本分を口移しで飲ませてもらった。 「……1人にしておくのは心配だが、早めに帰って来るから良い子にしてるんだぞ?」 うつらうつらしてる頭のままコクンと頷き、そのまま眠ってしまった。 「……その無防備さがつけ込まれる根源だよ?まぁ、俺も、絶対に手放す気はないけどな…」

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