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第22話

息も上がり、完全に抵抗を失わせてから、 キスの応酬が始まった。 巧みなキスは、さらに抗う力を失わさせる。 段々と頭に靄がかかっていくような気が してくる。理性を失いかけている証拠だ。 「んっ……ふっ……んぁ……んんッ……」 鼻に抜けていく感じ切った声が遠くに聞こえる 自分の声に間違いないのだが、認めたくない。 義父とのキスに酔いしれる自分が不自然だと わかっているからだ。 けれど思考を奪うように繰り返されるキスは まだ、経験の浅い勝己が酔いしれてしまうには 十分すぎるほどの巧みな深いキスを繰り返す。 やっと『男』としての自分を取り 戻せそうなのに、また、翻弄されてしまう。 また、流されて躰を繋いでしまう……? 不安な眼差しで尚之を見るが、彼はスーツを 着ている。仕事に行くスタイルだ。 「今日は大事な会議が朝一であるんだ。 ただ、終わったらすぐに帰ってくる。」 土曜日だったので、仕事はないと思っていたが 仕事に行ってくれるなら好都合だ。 「帰ってきたらすぐに抱くからな。 逃げようなんて思うなよ?そんなことを 考えてるならおしおきが待ってるからな」 ホッとしたのも束の間、告げられる。 退路を早々に絶たれてしまった。 熱を持っていたはずの自身も簡単に萎えた。 立ち去る後ろ姿を呆然と見つめる。 どれくらいへたりこんでいただろう…… ぼんやりする虚ろな眸で時計を見た。 時刻は9時半を指していた。 彼女が帰ったのが、朝6時…… 戻ってきて7時…… たぶん、尚之が出ていったのが8時過ぎ…… 長いこと床に座り込んでいとことになる。 ――抱くってなんだ? おしおきってなんだ? 行く宛てなんてない。けど、大人しく待ってる 義理もない。混乱する頭で考える。 ただ、躰の中でくすぶる熱は治まっていない。 ――怖い……あの人の言う『メス堕ち』 することが…… でも、そこで快楽を得てしまうことを 知った躰は、尚之の言う通り男にしか 反応しなくなってしまうのだろうか……? 焦った勝己は、スマホを取りだし 帰ったばかりの彼女の携帯を鳴らす。 『本当にかかってきた。すぐ戻るね?』 「え?どういうこと?なに?」 『勝己くんのお義父さんからね電話あったの。勝己くんから電話が来たら、家に来るように、って連絡あったの。急用なのかな〜?』 「……え?やっぱりダメ、きちゃダメだよ。 今日は帰ってゆっくり休んで?」 『もう、乗り換えたから向かうよ。 勝己くん家で寝るから、一緒に、ね? じゃ、電車だから、後でね?』 プツリと切れたスマホを見つめる。 嫌な予感しかしなかった……

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