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第33話

「……あん……あぁ……イイ……ソコ……」 頬を紅潮させながら髪に手を差し込んできては そのまま軽く力の入らなくなった手で両手で頭に手を乗せてくる。 すっかり抱かれることに慣れた躰は、柔軟に脚を開くようになっていた。 「…ァん……中……熱い……尚之さん…ァん…ので…んッ……もっと……奥まで…(こす)って……欲し…ぃ……指じゃ…ハァ……届かない……」 若くて柔軟な感性を持っている勝己の誘い方も尚之好みに仕上がってきていると思う。 無意識に男を誘っていることに気づいていないようだ。なによりも尚之を夢中にさせたのは、最高の躰の相性だ。良すぎるが故に、女性を抱く時よりも、しつこくなりがちになっている。 尚之がたかが2発出すのに勝己は精液が出なくなるまでの射精をさせてしまうのに、尚之はやっと手に入れた勝己の躰が勿体無いと思うのか時間をかけて濃厚なセックスになってしまう。 元々、早い方ではないが、女性を抱いても、 1回のセックスだけでコロッと落とせる程の 手管手練ではあったと思うが、これほどの時間を掛けたことなどなかったように思う。 男と女の躰の違いはあれど、1回のセックスで『メス堕ち』しなかったことが、頭のどこかによほどのショックとしてひっかっかってるのか?というほどの自分でも『しつこい』と思うようなセックスになってしまう。 快楽を逃がす為か、たまにシーツを踵が蹴るが ただ、その上を滑っていくだけで、また、膝が折れてはそれを繰り返す。 「……ァん……尚之さ……イイ……すご……」 素直に快楽を拾いシーツの上を泳ぐように 喘ぐ姿は尚之を酷く興奮させる。 涙に潤んだ眸は何も映していないが尚之に縋り付きたくて手を泳がせることも多くなってきた 滑らかな肌に口唇を滑らせることも心地好い。その度にビクッと反応してくる従順な躰は とても愛おしい。 紅い口唇は薄く開いたままで、声を上げる時に 少し大きめに開く。声を上げすぎて乾いた口腔内に唾液を注ぐように舐めると舌が絡まる。 上顎を舐めると気持ちよさそうに言葉にならない喘ぎを上げて喉を仰け反らせる。 勝己のGW直前の誕生日の夜、無理矢理躰を開いてから、数日は空いたが、それ以降、オナニーを教えたらひたすらそれだけをし続ける猿が如く、セックスを教える日々が続いている。 確かに、勝己は男子としては華奢で、顔立ちも男らしいとは言えないが、勃起をして一晩とはいえ、女性ともセックスして射精できる立派な男の子ではあるが、それを阻止しているのは間違いなく自分『尚之』自身だった。 己の母の死に涙を一筋流しただけ、 きっかけは本当にそれだけだった。 その瞬間から、尚之の中で勝己はなくてはならない存在になった。好都合なことに、勝己の母親の連れ子だった勝己、離婚した元夫の連れ子だった将人と尚之、明美が亡くなった場にいた3人ともが全く血の繋がっていない他人の集まりになってしまった。 それならば3人肩を並べて生きて行こう、と 話したところ、2人の義兄弟も喜んでくれた。 こちらの下心も知らない、というのが何よりも 好都合でもあった。 こちらの下心を知るには彼等は若すぎた。 特に勝己を大事に育ててきた。 ある時から将人もそれに気づいた。 だから、気づいたその頃から彼は他人行儀に 『尚さん」 と、尚之のことを呼ぶようになっていた。 勝己を守る騎士(ナイト)の如く傍で守りたかったのだろうが、全てが手遅れだ。 勝己は攻めるという男の本能より、女と同じく受け身でのセックスに慣れてしまっている。 文字通り、女では勃たない、満足出来ない そう作り替えているのだ。 男としての本能を捨てさせて、抱かれる悦びを 植え付けた。 それでも、また、女を作ろうとするなら、 前の女同様に徹底的に叩き潰す。 『歪んでる』自覚はある。 それ以上に、この手の中で乱れる勝己の姿が 最高に興奮を与えてくれていた。

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