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第35話
「うん、あ、そうなんだ。うん……今回はどれくらい滞在できるの?……うん、うん……」
勝己の携帯が鳴り、「将人からだ」と電話に出てから、将人が帰省する、という電話の様子で話をしていた。
電話が終わると尚之にも報告をする。
「まぁ、電話の話の内容からそうだと思ったけど、将人はなんだって?」
「夏休み中の練習はこっちだって。だから終業式が終わったら、帰省するって。」
これまで数年間、戻って来ても2、3日だったのが、夏休み中……?ずっといるのか?いくら防音の部屋だと言っても勝己が部屋に夜いない、
尚之の部屋にいることがわかれば、若い将人でもわかるだろう。
これまでの帰省は週末だったから、練習中の昼間にセックスをしていたが、夜はフラフラの勝己は早々に部屋で寝ていた。けれど、自分も満足した上で寝ていたので、ずっと抱きしめているのは我慢したが……
――さて、どうするか……
昼間は練習に行くだろうから、家にいないだろうが、夜は帰宅する。疲れ果ててさっさと寝てくれれば良いのだが、セックス、するか、しないのか、はともかく勝己と別の部屋で寝る気はすでにない。
すでに勝己は18歳になっていた。もう2年以上将人が帰省した時以外に、夜に勝己とベッドを別にしてきたことも無い。
盆休み以外で昼間にセックスできる日も少ないから、どうしても週末はどうにかなるとしても平日は辛い……というか、怖い。
勝己は完全に堕ちてることはわかってる……が前科がある。相手が女になるかわからない不安の方が大きいのだ。毎日のように、この手の中で乱してきた。その分、耐えてくれるのか?という大きな不安だ。
将人も不安材料の一人だ。勝己に誘われれば、間違いなく乗るだろう。まだ、将人が勝己への思いが芽生えたのは幼い頃だったが今は違う。
女とのセックス経験があるかはわからないが、男と女ではセックスの仕方がだいぶ変わる。
それをネットがこれだけ普及した現代に、本気なら調べていてもおかしくはない。
男は女のように濡れない。だからこそ準備が必要だ。こんなに不安になることは、ほとんどない。勝己を信じてないわけではないが、肉欲に溺れている最中だ。まだ、調教が完了したと思っていない。だからこその不安なのだ。
「怖い顔してどうしたの?」
フッと我に返る。
「ごめん、考え事してた」
フワリと勝己が笑う。
「ワーカーホリックだなぁ……」
いや、考えてたのは夜の営みについて、なのだが、勝己がそう思うならそれでも良いだろう。
目の前にコーヒーを差し出され、
「はい、少しブレイクタイム。固く考えてても、まとまるものもまとまらないよ?」
と勝己が微笑む。
――ワーカーホリックか……
確かに5年間、勝己への気持ちを紛らわすために夢中で働いた。
熱いコーヒーを口にしながらく、もう、その頃の自分には戻れないのだと実感していた。
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