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第32話

付き合って、と言ったが アレはチカラをコントロールする謂わば修行に付き合ってと言う意味だった。 「先に、オレにも付き合ってもらうぞ。」 そう先手を打たれ、 有無を言わさぬ勢いで連れ込まれた先は 義栄の寝室。 トン、と肩を押され 気付いた時にはベッドに押し倒されていた。 「へ、?」 眼前に整った意志の強そうな顔が迫ってくる。 ぎゅ、と瞼を閉じれば そこへキスを落とされた。 "キザだ。" 髪を撫でられ、 頰や顎も掌が優しく滑っていく。 「お前を抱きたい。 オレの願いを叶えたお前なら この願いも聞き入れてくれるだろ?」 人の返事すらもぎ取る男が、 幸せそうな瞳で桃李を見つめる。 スンと鼻を鳴らし研ぎ澄ませた探った 義栄の気配は やはり喜びと幸せの"気"に満ちていた。 全身で好きだと言っているようなモノだ。 そんなモノを見せておいて 断れる筈が無いだろう、と桃李は思うのだ。 覆い被さる男の首に、腕を伸ばして掴まる。 少しだけ近付いた夫の耳に こそっと、小さな声で打ち明ける。 「...待ってた。」 ◯◯◯◯◯◯◯ 高級ベッドもスプリングが鳴る事を頭の端で記憶した。 「イケよ桃李。」 ペチ、と露わになった桃李の尻を 義栄が音を鳴らして叩く。 「んンッ!ア...イクイクッ、ぁああーー。」 義栄の熱塊を彼の膝に跨り ずっぷりと咥え込んだまま、 桃李はもう何度目かの吐精をした。 もう殆ど出ないそこを 義栄の逞しく堅い指がまた手荒に扱き始めた。 「やだ、やだ...も、うでなぃ、」 「じゃあ何で勃たせてるんだ?」 ニヤニヤ笑って空いた左手で 胸の飾りを摘まみ上げる。 最初は分からなかったのに、 たっぷり2時間かけて仕込まれ乳首は 今や立派な性感帯へと成長した。 「そこ、さ、わンな」 「感じてるだろ、抗うな。 それに尻もいい具合に締まってる。」 「ぁあ、ア、あぅ...ンく。」 まださっきイッたばかりの余韻が 身体中を支配しているのに、 前を扱かれ胸も摘まれ、 尻に熱いモノを含まされていれば 何度目であってもこの身体は勝手に快感を追いかけてしまう。 龍の唾液は、桃李にとっては甘い媚薬。 熱が高まるほど濃くなる桃李の"気"は 龍にとっては史上唯一極上の甘露。 桃李が感じれば感じるほど、 龍の全てを清浄な"気"で満たし 何時に無く気分を高揚させていくのだ。 「凄いな、お前に絞り取られそうだ。」 自分でも腹のナカが、 義栄の欲に甘えて吸い付いているのが分かる。 じゅぽじゅぽと淫らな音までしてきそうだ。 「奥が、疼くんだろ?」 興奮で掠れた声が後ろから 桃李の耳を掠めてくる。 その熱い吐息でうなじを甘噛みし、 大きな手が尻を荒々しく揉みしだく。 「あぁー、ぁ...ァくっふ、ふぅ。」 咥え込んだモノがナカにあるだけで 心地いい快感をもたらしている。 可能ならばこのまま、 眠ってしまいたい程気持ちいいのだが 残酷なことに桃李の夫はまだ一度も熱を放ってはいない。 桃李がイク度にこうしてピストンを止め、 吸い付く桃李の肉を楽しんでいる。 だが、桃李は龍の為に作られた至宝の宝。 誰に聞くまでも無く それが自分の役目だと知っている。 そしてその役目は、 自分一人が淫らになるだけでは満たされない。 この身体の奥深い場所へ、 龍の熱を、心を受け止める事。 それが、只食って"気"を正すだけの桃が 人の心と身体を持った仙桃妃の役目なのだ。 この身体が幾ら感じて果てようと、 心まで満たされる事は無い。 むしろ、この身が熱くなっていくほどに 腹の奥が疼いて気が狂いそうな程になる。 義栄が、龍の熱が 欲しくて、欲しくて堪らない。 「わ、かってんなら、早く...っ、!」 震える声は妙に上擦って高かったが この身悶えしたくなる疼きに、 もう耐えられない。 決定的な証を、欲望の愛液を内奥に。 「ぁ...っ、わ」 うつ伏せで受け入れていた熱塊が、 不意にズルズルと抜けた。 そのまま腹のナカまで持っていかれそうな快感がゾワゾワた腰を震わせたが、 その隙にゴロッと転がされていた。 気付けば仰向けで 目の前には愛すべき男が、 獣のような荒々しい空気を纏っている。 まさしく虎の獰猛さを 鍛え上げられた肉体が語っていた。 目の前の淫らな獲物の喉に 熱い舌をたっぷりと這わせる。 「は、ぁ...あ」 細く伸びやかな声が堪えきれずに喉からでる。 「ぁ...ぁあー義栄ぃーーー」 背を抱かれ、密着していく厚い胸に縋り この凄まじい快楽に耐え忍ぶ。 ズブズブとこの身の内を肉が埋めていくが、 まだだ。 ここが最奥では無い。 "もっと、奥に欲しい。" 「ふ、ふ...ッ、くふぅ、ぁ...ッ」 「良いか。」 義栄も歯を食い縛り甘い快楽に耐えている。 その首に桃李は無我夢中で腕を回し 太い彼の首筋に 鼻先を擦り付けながらコクコク頷く。 「堪えろよ。」 くちゅり、と唇と舌が絡み合う。 そのまま飲み込みきれなかった義栄の唾液を 桃李がこくり、と飲み込んだ隙に 義栄の熱いモノが更に最奥へ、 ドチュリと音を立て挿入ってきた。 「か、は...ァ、あぁーーーあ、」 義栄の唾液は媚薬となり 最奥に硬く熱いモノを迎えても 全く痛みはなかった。 代わりに得たのは息も止まる程の快楽。 最奥をたった一度突かれただけで、 桃李は欲棒の先端からトロリと 止まない蜜を垂らし続けている。 「ま、って...」 ビクビクと跳ねる身体に耐えながら なんとか言葉を紡ぐ。 「無理だ。」 「ヒ...ぁあーーーイクまたイクッ!」 「は、可愛いな。」 ズルリと締め付けを味う様に抜かれ ドチュリと最奥を猛る先端で深く捏ねるように突かれては、震え跳ねる身体が絶え間無く イキ続ける快楽を味わわされる。 全身隈無く、 心までも熱いモノが侵食していく。 指先まで余す事なく 満たされた心地が広がっていく。 どれだけ果てても求めに応じる様に 桃李のナカは健気にも 義栄の熱を吸い上げている。 そのヒダはもっと、と強請るように 奥へ奥へと誘い込んでは穿たれ、 打ち震えて悦んでみせる。 「そう強請るな...っ、 腹一杯に出されたいのか。」 傲慢な男の焦る声を桃李は"良いな"と思った。 その瞬間、ナカをギュと締め付け 彼が小さく息を吐いたのが分かった。 「エロ過ぎだ、ろ。」 「うるさい」 抽送を止めた義栄が桃李に口付けながら言う。 息も絶え絶えに応戦した桃李の頰が赤く染まっていた。 その間も、桃李のナカは義栄の熱にチュパチュパと吸い付いている。 「腹一杯出されたいか? おい...尻で返事するな、お前はどうなんだ。 オレのが腹一杯になるまで欲しいのか?」 そう、再度聞かれたがカァッと身体中を火傷したような熱が駆け巡っていく。 拒否権は無いが、断る筈もない。 「いっぱい、かけて欲し...やだ、抜くなょ!」 蚊の鳴くような声より小さく強請った声は 義栄の耳までしっかりと届いたようだ。 だが、せっかく最奥まで挿入った熱を義栄は ズルリと抜いてしまった。 ぽっかり空いた孔が、腹の奥まで寂しい。 そのあまりの喪失感に思わず涙が込み上げて来るのが分かった。 「泣くな桃李、 少しうつ伏せになれ、楽になれる。」 頭を撫でキスされながら、なんとか納得して 疼く尻を揺らしながらベッドへ だらしなくうつ伏せになる。 「膝も立てるな、真っ直ぐ伸ばしてろ。」 「うん。」 本当にうつ伏せになり眠るような体勢で横になったがそこでギジリとベッドのスプリングが再び鳴った。 すると桃李の顔の両横に、義栄の掌が置かれ 背中にのしかかって来る彼の重みを感じる。 「嗚呼...ぁ、ぎえ、い」 「苦しいか?」 思わず漏れた声は、苦しいからでは無い。 遥かに逞しく大きい男の身体に組み敷かれ 快感を覚えたのだ。 「イイ...これ、好き。」 支配され、征服される喜びがあるとすれば それは愛する者からの行為のみに尽きる。 今、小さな尻を割り開かれ はしたなくヒクつく秘部をきっと 白銀の瞳に見られている。 やがて淫らな孔に義栄の雄が塗りつけられ ヌルヌルと硬いモノが孔に押し付けらた。 やがて、ぬぷっと先端が挿入され 容易く飲み込んでみせた。 「あ...嗚呼。」 待ち望んだ欲望が再び、挿入ってきた。 太くぷっくりと括れたカリ首が桃李の肉と 前立腺を擦り、 そのまま一息でS字結腸まで辿り着いた。 「大丈夫か。」 耳の後ろから優しく聞いてくる声が、 切なく甘く愛おしい。 しかし、後ろから受け入れるこの体勢は 先程より遥かに深く 義栄を尻の孔へと受け入れていた。 声を出す間も無く、 今度は吐精すらしないままイッたが もうこれ以上一人で果てるのは我慢出来ない。 「はや、く...かけて、義栄ぃの。」 その"おねだり"に煽られ 本気を出した義栄の責めは最高に激しかった。 肉のぶつかり合う音と、 ぐちゅぐちゅ濡れた音、 それから短く吐き出される興奮の吐息だけが 寝室中を満たしていた。 義栄の放つ精液の全てをナカで受け止めた。 やがて感じ過ぎて身体が無意識に逃げを打つ桃李の肩を義栄はグッと押さえ付け 尚も激しく腰を打ち付け続けた。 そのまま三度は桃李のナカを精で満たした。 さらに、快楽に負け理性を無くした桃李は 殆ど無意識のまま両足を自ら大きく開き 腰を少し浮かせもっと深く、 更に奥へ義栄が挿入る姿勢をとった。 「あぁ...いぃ、きもちぃ...好き、すき」 「ああ、オレもだ。」 「きもちいぃ、すきぃ...嗚呼イク、イクまたイク義栄ぃ、!」 感じたまま口から溢れてやまない気持ちが 余計に二人を興奮させる。 「イケ、ナカにかけるぞ...くッ、う。」 まさに交尾と言える体位で お互いの腰を振りたくり高みを目指す。 やがて宣言通り 義栄の精が桃李のナカへ最後の一滴まで注がれる。 「ぁ、熱ぃ、の...きてる、」 幸せそうに吐露する唇に、 義栄は身を寄せながらキスをした。 「腹は満たされたか?」 その額には汗が浮かび、 眉が険しそうに寄せられている。 その表情が見られただけで桃李は胸がいっぱいになる気がした。 「おれ...妊娠しそう、」 息も絶え絶えに、蕩けた頭でぽつりと言ったが そのセリフが治まりかけた義栄の熱を煮えたぎらせてしまった。 「桃李...桃色の虎は好きか。」 「え、?」 「オレの願いをもう一度聞け。 オレは今、お前を孕ませたい。」 「ぁ、ああっ、ちょ、ンく...待ってぇ、!?」 再び始まった律動は、 また深く愛おしく気持ちいい。 桃李は確かに宝珠と仙桃と共に 天帝により創られた。 そして、宝珠は 持つ者の願いをひとつだけ聞き届ける。 だが、その願いは既に成就されており 次に桃李が孕むとなれば はたまた神の身技か、 奇跡が起きなければならない筈なのだ。 そう言えば、祖父が昔言っていた。 「白虎は、夫婦円満、子宝、安産の神様だ。 良く良くお願いしてみれば誰にでも奇跡が起こるかも知れんのぉ。」 あの食えない狸じじいが言う事を 素直に受け止めていた頃が懐かしいが、 素直に聞くには怪しいセリフばかりを吐くじじいなのだ。 "誰にでも奇跡が起こる"と言った。 それは、今の今まで 女性なら誰にでもという意味だと思っていた。 素直に、 その言葉を今まで通り受け止めるならば。 だが、今の桃李はどうか。 男でも嫁に行けと言われ、 孕まずとも虎の子を宝珠だからと授かる事が出来たこの身としては十分に怪しむべき台詞だ。 ーーおれ、もしかして本気で孕めるかもーー 四龍は神獣、つまりは神様だ。 そしてこの男・白虎は子宝と安産の神様。 神様と奇跡が合わされば、 何だって起こり得るかも知れない。 何せここは、天界・高天原。 神と仏と精霊と 神獣たちの住む世界なのだから。

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