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第43話
「しまったな。」
焦って大きく理性を欠いた行動を取ってしまった。
まさか城のすぐそばで、木が枯れているとは思いもしなかったのだ。
理性を欠いた己の愚行を騰礼は振り返る。せめて桃李を伴っていくべきだったと思う。
ズキズキと痛む四肢に加え、
臓腑が焼ける様な感覚が襲う。
実際、熱くて痛くて堪らないのだ。
吐く息もこの身体も熱を帯びている。
水が欲しい。喉が乾いた。
だが欲しいのは水よりもこの身を満たすものを知っている。
「... ...桃李、」
芳しい仙桃を纏った四龍の秘宝。
仙桃妃、と名付けられた彼等はいつの世も騰礼の胸を乱す事は無かった。
だというのに、天塚桃李アレだけが騰礼の目を惹きつける。
腕に捕らえると身を硬らせる。そのくせ、抱きすくめると途端、身を許すように肌を寄せてくる。
この生き物の愛おしさが誰に分かる。
求め合う口付け、溢す吐息のその全てが極上だった。
まさに、龍の至宝。
持ち主の願いを叶えるというその秘宝が漸く、俺の願いが叶えたのか。
「桃李、」
だが彼は今、此処には居ない。
「桃李... ...桃李、とう、り」
ーー嗚呼。熱い。
俺の至宝。俺の妃。
どうか、俺を独りにしないでくれ。
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