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天からまんじゅう

ぼくちんの気持ちと同じ灰色になった街の中をずぶ濡れになりながら、ゆらりゆらりと歩く。 高層マンションが並ぶ車通りの多いところに出たようで、雨の激しい音と車のエンジン音が拮抗していてとてもうるさい。 騒がしさを避けようと適当なところで曲がると、路地裏に入ったようでザーザーやポチャポチャという雨音だけが鳴り響く。 「雨粒はまんじゅうの形をしてるって聞いたことありゅ……天からまんじゅうなら、幸せ降ってこにゃいかなぁ」 棚からぼたもちじゃあるまいし、と付け加えながらも空を見上げたのに、虚しく冷たい雨がぼくを突き刺して凍えさせようとするだけだった。 「とりあえず、どこかで暇をつぶそう」 持ち物は300万円が入っているらしい茶封筒のみ、上着はタオル地の長袖だからもうちょっと先にある駅まで行ける。 駅前ならマンガ喫茶もホテルもあるはずだから。 ぼくちんは下唇を噛んだ後、水分でへばりついた前髪をかきあげて一歩踏み出した。

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