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ミツ
「だいじょうぶぅ?」
ノックされた音にドキッとしたぼくちんはすぐさま指を抜いて、とりあえず椅子に座る。
「どうかしたぁ?」
間延びした高い声を出しながらドアからひょっこりと君が顔を出す。
「いえ、ちょっと熱いお湯が出てきたからびっくりしただけでしゅから……すいましぇん」
咄嗟に嘘をついて愛想笑いを浮かべると、それなら良かったぁと柔らかい笑みをぼくに見せる君。
「左のノブで温度調節出来るからぁね、ヤケドはしてない?」
「大丈夫でしゅ」
「そっかぁ……えっと、何くんだっけ?」
「三角満と申しましゅ」
みつかどみつる……となぞるようにつぶやいて目線を上にした君はすぐにパッと表情が明るくなった。
「じゃあミツって呼ぶなぁ……濡れた服は全部乾燥機にかけるから、とりあえずは、‘‘あ’’の服着てちょうだいねぇ」
君はふふふと笑った後、小さい手を振ってドアを閉めていった。
「あっていう一人称、珍しいでしゅね」
平安時代に使われていたのは知っているけど、現代で使っている人は初めて……それに最初に聞いた言葉とだいぶ変わっている。
「不思議な人に出会ってちまったでしゅ」
名前をまだ知らない君は本当に天使かもしれない。
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