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第10話
「会長は去年、中等部で千歳と同じクラスでしたっけ?」
「あ……ああ」
いきなりの問いに、会長は少し驚いたようだ。
一瞬、目を見開いたがすぐにポーカーフェイスに戻る。
「……特別、仲良かったわけじゃないけどな」
「ふ~ん」
まあ、確かに千歳と会長が仲が良いとは聞いたことがないけど……。
「会長、そろそろ」
「わかってる」
俺達の会話は、取り巻きの一人が恭しくそう言ったことで、終わりを告げた。
会長の一年で生徒会長というのが異例なわけだから、周りにいるのは二年か三年の先輩だろうに。
さすが学園の女王様、扱い慣れてる。
「それじゃあな、八神。来週だぞ」
そう言うと、会長は周りの彼らを引き連れてその場を去って行った。
その会長と千歳がすれ違う瞬間、二人の間に何とも言えない空気が流れたのを俺は感じていた。
「相変わらず、会長の周りはすごいな。病院とかの回診みたい」
会長の後ろ姿を眺めながら亮太がそんなことを言った。
「お前、ドラマとかの見過ぎ……」
亮太に呆れながらそう突っ込んでおいてから、会長の姿をじっと追いかけている千歳に俺は声をかける。
「会長のこと……気になる?」
「別に……」
俺の問いに千歳は我に返ったようにそう答えた。
今の視線はどう見ても恋する男のものだったけど?
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