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第15話
放課後、一度家に帰り私服に着替えてから、亮太に言われた待ち合わせ場所に行った俺は、すぐに回れ右をして帰りたくなった。
「……はめられた」
俺はそう言わずにはいられなかった。
その待ち合わせ場所には、やけに浮かれた亮太と、亮太好みのおとなしめな感じの女……そして、その友達らしき派手な感じの女がいた。
女二人は、俺達よりも年上で二十歳前後だろう。
するとちょうど、俺のスマホが鳴った。
着信相手は……高瀬千歳。
俺はすぐさま、通話を押した。
「どういうことだ、千歳! 俺は亮太の彼女を見極めるってことで呼ばれたんだよな?」
俺が怒鳴ると、千歳は何でもないかのように平然と答えた。
『おっ、その様子だと会ったんだな? 亮太に頼まれて、姉貴の友達紹介したんだけど、どうだ?』
「どうだも何も、何で女が二人いる! お前知ってたな」
俺がさらに怒鳴ると、スマホの向こうで千歳が笑う。
『亮太に言われてたんだよ。せっかくだから、和彦にも紹介してくれって』
(……なんて、余計なことを)
スマホを持つ俺の手が、怒りのため震えてくる。
『まっ、たまには和彦も羽目外して来いって! じゃ、話はまた今度聞くからな』
「あっ、おい、千歳っ!」
俺の心境を知らない千歳は楽しそうにそう言うと、さっさと通話を切ってしまった。
俺の呼びかけが虚しく残った、その時。
「あっ、カズ~!」
俺の声に気づいたのか、亮太がのん気に俺を呼び大きく手を振っている。
(こんの大馬鹿野郎!)
今回の元凶である亮太を俺は一瞬だけ睨み、すぐに笑顔を取り繕って三人に近寄った。
「ごめん、遅れて」
「いや、カズは時間通りだよ。俺達が早かっただけ」
そう言うと亮太は隣りに立つ二人の方を向く。
「香織さん、綾さん。こいつが今、話してた……」
「八神和彦です、よろしく」
亮太の説明を遮って、自分で名前を名乗った。
すると、亮太好みの方がふんわりとした笑顔を見せる。
「初めまして、野上香織です。こっちが……」
「香織の親友。私のことは綾って呼んでくれていいわよ、カズくん」
なんて馴れ馴れしい人なんだろうか。
綾さんは香織さんとは対称的なタイプのようだ。
「はぁ……よろしく、綾さん」
俺がそう答えると、突然右腕に綾さんが両手を絡めてきた。
(あの……胸が当たってるんですが?)
これなら、朝の女子高生の方がマシだったかも。
でも、そんな俺達の様子を見ながら亮太は頬を染めて笑顔で言った。
「とりあえず、どこかで食事でもしようか」
そして、はにかみながら前を歩く亮太達の後を、俺は綾さんに引っ張られながらついて行った。
絶対、今日は厄日だ……。
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