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始まり(2)

そこにはブラックの背景にゴールド文字。 「 sweet tear 」と書かれてあった。 ーー 甘い、涙? そして画面をスライドさせていくと注意事項や値段などが書かれてある。 『……何の仕事?』 眉を顰めながら首を傾げた。 「んー、そうだな。 簡単に言うとレンタル彼氏みたいな感じ?」 レ…レンタル…彼氏? 初めて聞く職業にまた首を傾げた。 「プランにもよるけど。 男と食事に行ったり愚痴を聞いたりとか? まぁ相手によっちゃ……一晩寝たりもする。」 最後の一言は少し冗談交じりに笑う。 しかし俺にはとても冗談に聞こえなくて、ぎょっと目を大きく見開いた。 『ひっ、一晩って…っ…そのっ ハ…ハレンチ…っ…なことをするってこと?』 「ブハッ!! ハレンチなことってお前っ…!ガキかよ!! 今時、中学生でもそんな言い方しねぇぞっ。」 そう言うと瞳に涙を溜めながら爆笑された。 『だ、だ、だって!! お前がそんなことサラッと言うからっっ!!』 顔がぶあっと熱くなって、祥太郎をジロッと睨みつけた。 「たっく……どこのピュアだよ。 俺はバイだから仕事とか関係無く趣味で寝てるってゆーか? でもそうゆー行為は基本アウト。だから秘密な?」 そう人差し指を口元に当てながらウインクする。 その仕草が一々カッコつけてて腹が立つ。 恐らくこの仕草も見る人が見ればカッコイイとか可愛いとか思うんだろうけど。 すると祥太郎が更に詳しく書いてある金額表を見せてきた。 興味本位で覗き込んでみる。 そこには…… 俺の常識では考えられないほどの金額が書かれてあった。 一時間 10000円 + (出張料) 指名料 5000円 ✽食事代などはお客様の支払いとなります。 『い、い、いちまんえんんっっ!!!』 ゴホゴホッと盛大に咳き込んだ。 たった一時間でっか!? 俺の時給の何倍だよ!?  あまりの驚きに祥太郎の顔をバアッと見上げた。 「全額貰えるって訳じゃねぇからな? 運営に何割か持っていかれるし。」 『で、でも!!めっちゃ稼げるよな?! 祥太郎ってオシャレだしイケメンだし!!』 「な、なんだよ。 急に褒めたりしやがって…… まぁ身だしなみも美容も仕事の内だから。 てかお前って…良く見りゃいい面してるよな?」 そう言うと長い俺の前髪を掻き上げられた。 すると祥太郎が目を見開いた。 しかし俺はスマホを握りしめながら金額表をガン見。 『いいなあ。……う、羨ましい。』 ついつい心の声が漏れてしまう。 庶民どころか貧乏な俺にとっては考えられない金額だ。 たとえ出費を考えたとしても俺の小遣い分まで残る。 弟の瞬にだって贅沢させてあげれる。 それにタダ飯かよ。食費だって浮くじゃん。 想像すればするほどヨダレ出るぐらい羨ましかった。 『……あっ。でもさ? これって男が男の相手するんだろ?』 「まぁな。 そっち御用達の仕事だから。」 『そ、そうなんだ。 ……じゃあ俺…無理だ。ありえねぇな。』 そう呟きながらスマホを祥太郎に返した。 そっか。ちょっぴり夢見ちまった。 まず俺は人見知りだし、喋るのだって苦手だ。 イケメンでもないし…それに…… その瞬間、嫌な過去を思い出した。 すると俺の言葉に祥太郎の片眉がピクっと上がる。 そして顔を俯かせ、そのまま俺の目の前に立った。 『しょ、祥太郎??』 ただよらぬ雰囲気になんとなく足元が竦む。 そしてゆっくり顔が上がった表情を見て、体が冷え鳥肌が立った。 「何? 何がありえねぇって? ……男が男の相手しちゃ、悪いかよ。」 祥太郎が聞いたこともない低い声で俺を見下ろした。

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