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俺の思い

✽   ✽   ✽ あの後すぐに祥太郎とはさよならし、俺はバイト先へと向かった。 「ずっとそこで立ち止まってんだろ、お前。」 その言葉が未だ俺の心を惑わしていた。 立ち止まってる、か。 アイツ…一番痛い所ついてきたよな…… 「変わりたいとか思わねぇの?」 いつも思ってるよ、変わりたいって。 でも少しずつだけど、まともに喋れるようになったんだ。 マニュアル通りなら接客だって出来るようになったし。 でも例えどんなに変われたとしても…… 過去の傷が癒えることなどない。 なぁ。祥太郎。 俺の気持ちが分かる? 幼馴染で俺にとって唯一の親友だった奴に裏切れた気持ち。 毎日信じてた親友にいじめられる気持ちが。 俺が臆病者なんじゃない。 そいつが勝手に俺のことを臆病者に作り上げたんだよ。 アイツの顔が脳裏にはっきりと浮かぶ。 気が付けば身体が勝手にガタガタと震え出した。 高校卒業と同時に忘れるって決めたのに。 大学に入れば変われるって信じてたのに…… 俺はまだアイツに囚われているんだろうか? 結局俺は、体調を崩し早退してしまった。 店長に謝罪し、ファミレスを出ると冷たい風が俺の顔に当たる。 『……さっむ。もうすぐ冬だなぁ。』 そう呟きながら自宅に向かってゆっくり歩き出した。 ちなみに俺は冬が大嫌いだ。 寒いのが苦手だってこともあるけど、一番は最悪なあの日のことを思い出す。 やっぱり人間ってそう簡単に克服出来るものじゃない。 深く傷ついたものならば尚更だ。 フラッシュバックになるきっかけなんて山ほどある。 季節や匂い、嫌な思い出の場所だったり。 忘れたくても日常が忘れることを許してくれないんだ。 だから一生忘れることの出来ない傷を抱えながら生きていく。 友達も彼女も要らない。 誰も信じねぇ。そう決めている。 可愛い弟と俺を慕ってくれる妹の為に生きていくんだ!! 俺はふぅと大きく深呼吸をし、新たに決意する。 明日からまたせっせとバイトするしかない!! 世の中……金なんだっっ!! するとその時、目の前に見覚えがある人物が笑顔で立っていた。 『えっ……しゅ、瞬!?』 目を見開きながら名前を呼んだ。 「へへ。お疲れさま。」 『こんな所で何してるんだ!?』 「もうそろそろ終わる頃かなって思って。 居酒屋やめたって言ってたから、予備校の帰りに寄っちゃった!」 そう笑顔で言うのは俺の大切な弟だ。 『ばっ、ばかっ!! たまたま早く上がらせてもらったんだよ! てか寒いんだから待ってなくていいのにっ。』 「だって…… 兄ちゃんと一緒帰りたかったんだもん。」 だもんって…… どんだけ俺のことが好きなんだよ。 ちくしょう…… 全く。俺の弟のくせに……可愛いすぎだろ。 『……明日風邪ひいても知らないからな!!』 口を尖らせながらそう言った。 そして自分のマフラーを瞬の首に巻いてあげる。 すると瞬が嬉しそうにふにゃっと笑った。 「久しぶりにご飯一緒に食べれるよね? 近所のスーパー寄っていく?」 『うん、そうだな。 瞬と夕食なんて久しぶりだよなー。 よーしっ。 なら今日は好物のコロッケ作ってやる!!』 すると瞬が目をキラキラさせながら喜んだ。 「兄ちゃんが作ったコロッケ大好きっ! 学食にもあるんだけどさ? 兄ちゃんの作ったコロッケが美味すぎて食べれたもんじゃないよ。」 そう笑顔で言うと俺の横に来て肩を並べた。 瞬は俺とは違って本当に優しくて社交性もある。 そして何よりも昔から俺を褒めちぎることが上手いヤツだ。 だから瞬のお陰でさっきまでの体調の悪さも徐々に良くなっていた。 『へへっ、サンキューな。 そうだ。学校は楽しい? ちゃんも友達とは仲良くしてるのか?』 「うん、楽しいよ。 予備校のお陰で勉強にもついていけてるし、買ってくれたスマホのお陰で友達も増えたよ。」 『そうか!!それは良かった!!』 「兄ちゃんが…… 俺の為に色々我慢して頑張ってくれてるからだよね。 いつもありがとう。」 そうお礼を言って優しく微笑んだ。 その表情を見た俺は、今まで頑張って本当に良かったと思えた。 俺にとって瞬は大切な家族であり、弟であり、俺の一番の理解者でもある。 新しい父親に追い出された時も、俺と一緒に暮らしたいと母親に反発もした。 瞬だけが俺の味方でいてくれる。 だからこの笑顔を絶対に守る為にも…… もっともっも頑張らなくちゃいけない。 そう強く心に思った。

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