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まさかの不合格

しかしそんな高鳴りも虚しく…… 「お前みたいなのは、うちに必要ない。」 たった今。 俺の目の前に座る怖そうな男がそうハッキリと言い放った。 まさかの言葉に俺は目を丸くさせる。 同じく隣に座る祥太郎もまた驚いた表情をした。 バイトが終わり祥太郎と約束した通り待ち合わせ場所へ行った。 そして会った早々、身だしなみチェックをされる。 「お金は稼いだら返せ」と、洒落た服を勝手に一式買い直された。 最初は嫌々だったけど…… 途中から友達と買い物してるみたいでめちゃくちゃ楽しかった。 だからその時点で俺の中ではもう色々吹っ切れて働く覚悟は出来ていたのかなって思う。 な、なのに……。 目の前にいるこの社長らしき人は、そんな俺の決意をボキッと簡単に折ってしまう。 「お前みたいなのは、うちに必要ない。」 「……は?ちょっ、蓮さん? いやいや、冗談っすよね!?」 祥太郎も予想外の返答だったのか、机を強めに叩いた。 「あ?俺が冗談言う面か。 まずここで冗談抜かすほど暇じゃない。」 その蓮さんって人は何一つ表情を変えず、祥太郎をただ一点見つめる。 なんだ……この人……表情がとても読みづらい。 すごく威圧感があって今まで出会った事のないタイプだった。 すると蓮さんが胸ポケットからタバコを取り出した。 「祥太郎。正気か? 人見知りの上に男相手の商売で男が苦手だと? お前、ここは相談所じゃねぇんだぞ。」 イラついたようにタバコに火をつける。 「だから昨日お願いしたじゃないっすか。 ここで一緒に働けれれば、きっと光も…っ……」 すると蓮さんが祥太郎の言葉を遮った。 「じゃあ、はっきり言わせてもらう。 コイツにこの仕事をこなすのは絶対に無理だ。」 「な、なんで…… そんな事が蓮さんに分かるんすか!」 「お前は普段こそ不真面目だが、仕事となれば全くの別人だ。 それはお前が男を好きで、男を喜ばせる才能があるからだ。 しかしコイツにはそんな才能が一ミリも見当たらない。 何よりも恐怖心を抱きながら接客するなど、高い金を払ってる客に失礼だ。」 「……っ……」 最後の言葉に祥太郎が顔を顰め、グシャっと頭を掻いた。 ……うん、たしかに。 自分のことなのにまるで他人事のように納得してしまう。 本当。その通りだよ。 男が苦手でコミュ症の俺なんかに払うお金なんて勿体ねぇよ。 ちょっと身だしなみを変えたからって…… 俺なんかに出来る訳ないって分かってたじゃん。 事実まだ蓮さんと会釈しただけで一言も喋れてもいなかった。 あまりにも場違いな自分に「帰りたい」と祥太郎の裾を引っ張る。 しかしそんな俺の訴えも虚しく、祥太郎は手を払って蓮さんに言い寄った。 「なんだよ、それ。 男嫌いになった理由だってあるでしょ? だからそれをここで克服したいって蓮さんに頼んでるじゃないすか! 本人は変わりたいって思ってんだから…っ…… だからそれも配慮しながら光に仕事させてやって下さいよ!!」 祥太郎が興奮したように声を荒げた。 普段見ることのない必死な祥太郎の姿にどうしようもなく胸が熱くなる。 でもそれと同時にやっぱり帰りたい気持ちが複雑に交差していた。 「蓮さん!!」 「……しつこい。無理なもんは無理だ。 分かったならお前、さっさと帰れ。 祥太郎は仕事だろうが。さっさと準備しろ。」 蓮さんはタバコの火を消すと立ち上がり、部屋から出て行った。 すると祥太郎が大きな溜息を吐き舌打ちをする。 「お前ちょっとここで待ってろ。」 苛立ちを抑えきれない表情し、蓮さんの後を追いかけて行った。 『………』 一人取り残されてしまう俺。 どうすればいいのか分からず、とりあえず姿勢正し待つしかなかった。

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