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まさかの不合格(2)

まだかよ祥太郎…… かれこれ20分以上待たされている。 でも勝手に帰る勇気もなくてただ待つことしか出来ない。 今頃になってさっき「必要ない」って言われた言葉がじわりじわりと胸に突き刺さる。 たしかに必要ないだろうけど、本人の前であんなハッキリ言うか?普通。 しかもあんな恐ろしい顔で。 絶対にただの一般人じゃないって。 絶対一人ぐらい人殺したことあるような顔してた。 いや、絶対あるよあれは。 なんて心の中で悪口を言う。 あ、てかバタバタしてて瞬に連絡するの忘れてた。 そう思い出し、バックから携帯を取り出した。 ーー トントン 『……?』 突然ドアが二回ノックされた。 祥太郎かな? でも祥太郎ならノックする訳ないよな? 不思議に思って返事をせずにそのドアをじっと見つめた。 しかし誰かが入ってくる様子も無く首を傾げる。 すると。 ーー ドンっドンっ! 今度は更にさっきよりも強めのノック音が聞こえた。 『……っっ!あいっっ。』 あまりにも大きな音に驚いて、つい声が裏返り妙な返事をしてしまった。 するとドア越しに「クスクス」と控えめな笑い声が聞こえてくる。 そしてその笑い声と一緒にドアが開かれた。 「どうも。こんばんは〜。 祥ちゃんの紹介で面接に来た子だよねぇ?」 その人はニコニコと笑顔で部屋に入ってきた。 色白で大きめのVネックのセーターに細身ジーンズを着た可愛らしい人。 髪は少し短めで見た目は女の人に見える。 でも声は少し低いからどっちなのか分からない。 『……っ……あ、はい。』 聞こえづらい声で返事して頷く。 「やっぱり〜? なんか噂で面接するって聞いたから、どんな子だろうって気になって来ちゃった!」 そう言うと嬉しそうに微笑んだ。 『あ……で、でも…っ… さっき社長さんに断られてしまったので…っ…』 俺は気まずく苦笑いを浮かべながら顔で俯かせた。 「え、それって……蓮のこと?」 『……は、はい。』 俯きながら二度頷くとバタバタと足音が聞こえた。 ビクッと顔を上げる。 するとその人は俺の横に座ってきた。 そしてまた可愛いく微笑んだかと思えば、表情が一変して変わる。 「……は?何なの、アイツ。 こんな可愛い子を断るなんて! ……もうっ。許せない! てか自分の仏頂面を鏡で見た事ないのかなっ!?」 そう言うと頬をお餅みたいに膨らませた。 その仕草は可愛い女性のようだった。 しかし可愛い顔して意外とお口は悪いらしい。 「ハァ……バカなのかな?本当に。 ごめんね?嫌な気分にさせちゃって。 本当は悪い奴じゃないんだけど、少し言葉知らずなんだぁ。 だから悪気はないから……許してあげて?」 そう言うと上目遣いで俺の膝に手を添えた。 ドキッと胸が高鳴る。 しかもかなりいい香り。 顔をブンブンと横に振って、首を激しく頷かせた。 「ふふ。よかったぁ。 あ、そう言えば自己紹介まだだったよね? 僕は…… 蓮と幼馴染で一緒に経営してる楓と言います。 よろしくね?」 ええっ!? ……ぼ、ぼ、僕?! まさかの男の人で驚きで大きく目を見開いた。 「ふふ。あのね?一応ね? 僕もここの代表なんだよー。 あ、君のお名前を教えてくれるかな?」 そう傾げる楓さんの笑顔は本当に心から思うほど可愛らしい人だった。 男の人に可愛いは失礼かもしれないけど…。 それに間近で見ると肌は綺麗で目もくりくりしてて鼻筋もスッと通っている。 何よりも顔がとても小さい。 それはまるで天使のような人だ。 この人が男の人だとはどうしても信じられない。 簡単に現実を受け止められずつつも、俺も自己紹介をする。 『えっと……お、俺は…っ… 大学2年の……長峰 光です…っ……』 「光くんかぁ。 うんうん。よしっ、覚えたっ!」 今度は子供のようにエヘヘと笑う。 どうやら楓さんは人懐っこい人のようだ。 「ねぇねぇ!? 僕の方が年上だから光って呼んでもいい? あ、馴れ馴れしいかな?駄目??」 そう言うとまた上目遣いする。 「いえ…っ…全然、大丈夫です…っ…』 また激しく頷いた。 もし俺なら初対面で呼び捨てするなんか絶対に無理なタイプだ。 でも楓さんは人見知りの俺を昔から知ってるかのように懐に入るのが上手い。 チラッと目を向けると、またニコッと微笑んでくれた。 楓さんはずっと笑顔だからこっちまで笑顔になりそう。 そんな楓さんはどうやら僕よりも5つ上の25歳らしい。

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