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まさかの不合格(3)
「ねぇねぇっ。なんで光は面接にきたの?
祥ちゃんに無理矢理誘われてきたの?
もちろん仕事の内容は知ってるんだよねぇ?」
笑顔の楓さんが机に頬づえしながら質問攻めしてくる。
しかも相変わらずのとびっきりの笑顔でだ。
そんな楓さんに困ったように頬をぽりっと掻いた。
『いやっ……
無理矢理とかじゃ、ないです…っ…!!
詳しくじゃないけど…な、何となく内容は把握してます。』
まぁ無理矢理とまでは言わないけど、強引に連れて来られた感はある。
でもさっき俺を庇ってくれた祥太郎を思い出したらさすがに何も言えない。
実際に服を買う時とか俺ノリノリだったし。
でも……
蓮さんにはっきりと断られた。
俺には無理だって。
だからもう働く気なんてこれっぽちもなかった。
「そっかぁ。それなら良かった〜。
祥ちゃんってさ?
なんか王子様みたいな顔面してるのに、実はとぉっても意地悪なんだよね。
だからちょっと心配してたんだぁっ。」
そう言いながらクスクスと笑う。
そんな楓さんの隣で「うんうんっ」と激しく同感した。
すると楓さんが眉をピクりと動かす。
「え、もしかして意地悪とかされてる?
ま、まさか。イジメられたりしてないよね?」
そう尋ねる楓さんの表情はまるで心配するお母さんのようだ。
『いえっ……全然そんなっ。
祥太郎は俺の友達の幼馴染なんです。
だから今までそんなに絡んだ事とかなくて。
でも俺だけにはなんだか冷たいってゆーか。
意地悪だなって思う時があるってゆーか……??』
「そうなの?
祥ちゃんって外面いいから、冷たくするなんて意外だなぁ。
でもそれって光には素を見せてるんだよ〜。」
……祥太郎が俺に?
いやいや、それはない。
素じゃなくて、裏の顔。
きっと祥太郎は臆病者の俺を見てるとイライラするんだ。
否定もせず、ただ苦笑いを浮かべた。
すると楓さんが考え込むように俺をじっと見つめる。
『……っ……あの、?』
「……光ってさぁ。
知らない人とこうやって話すの嫌い?」
『……えっ、』
間をおいて、目を見開く。
「あっ!!気にしてるなら、ごめんねっ。」
申し訳なさそうに眉を下げた。
驚いた。
楓さんは喋りやすいから普通に会話出来てるつもりだったのに。
しまった、と顔を俯かせた。
『……す、すみません。
なんか顔に出てました、か?
き、嫌いっていうか……その、苦手なんです。』
「……じゃあ僕と話すのも……苦手だった??」
『っっ。と、とんでもないですっ。
楓さんは喋りやすいですからっ!』
視線を合わせ、首を横に大きく振った。
初めて会った人ならこんなに目を合わせられないし、心なんてこんなに穏やかじゃない。
「ほんと?」
『ほ、本当っ。本当ですっ。
楓さんめちゃくちゃ喋りやすくて…っ…
自分が人見知りでコミュ症のこと忘れてたぐらいですっ。』
自分でも驚くぐらい興奮したように声のボリュームを上げた。
すると眉を下げてた楓さんがホッとしたように、柔らかく微笑む。
その表情が凄く綺麗で優しくて…息が止まりそうになった。
楓さんの瞳は、どこか不思議なんだ。
『……あの、俺。』
気がついたら、勝手に口が開いていた。
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