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俺と楓さんの過去

『高校生の時…… 幼馴染にずっとイジメられてたんです。』 そう呟くと楓さんが少し驚いたように目を見開いた。 自分でも驚いてる。 瞬さえ知らない俺の過去を誰かに話すなんて。 でも楓さんと話していると不思議と自分をさらけ出したくなる。 『もう二度と…… 思い出したくもない最悪な思い出…っ…』 震えた声でそう呟いた。 相変わらず脳裏に浮かんでくるのは、ニヤりと俺を見下ろすアイツの姿。 やめろ、消えろ。 頼むから、俺の記憶から消えてくれ。 そう何度頼んでもアイツの存在は消えない。 恐怖で体が強張る。 するとそれに気付いた楓さんが悟ったように微笑んだ。 「誰にだって忘れたい過去ぐらい一つや二つあるよ? 僕にだって数え切れないほどあるんだから。」 そう言うと自虐的に笑った。 「でもね? そんな過去があるから今の僕があるんだ。 そんな傷ついた過去があったから…… 今、こうして僕は幸せでいれるんだって。」 微笑みながらそう言うと、俺の頭を優しく撫でた。 「今はまだ…… 辛くて嫌でも時間が解決してくれるよ、きっと。 これから光の長い人生の中で色んな人と出会って色んな経験をしていく。 時にはまた辛いことだってあるかも知れない。 でもね?その度に気付いていくんだ。」 そう言うと天井を見上げた。 「僕の場合だけど…… 自分にも悪い所あったんじゃないかなって。 なんでこんな風になったんだろうって。 そう考えてみるだけで違う見方になったりするよ。」 俺の悪い所……? そう言われてもピンと来ない。 だって俺は理不尽にイジメられていたんだ。 あんなに中学まで仲良かったのに…… 突然イジメられた気持ちが分かるか? アイツはただ俺のことが邪魔になって、元々嫌いだったんだ。 だから……何一つ俺が悪かった所なんて…… でもそんなことハッキリとは言えず、唇をぎゅっと噛み締めた。 今でも幼馴染と仲良くしてる楓さんに俺の気持ちなんてわかる訳ない。 すると突然。 楓さんが俺の右手を優しく握りしめた。 「じゃあ……僕と半分こにしない?」 『え……??』 『光は一人でその過去と戦ってるでしょ? だから僕が光の嫌な思い出を半分こにしてあげる。』 ニコッと笑って握っていた手をぎゅっと強めた。 はんぶんこ…… 意味が分からず、首を傾げる。 「僕に教えてよ。 その最低最悪な幼馴染の話。」 ドキッと胸が高鳴った。 今まで自分の過去を誰かにぶつけた事なんてなかった。 男としてイジメられてました。なんて言えなかった。 だから奈津美にそう伝えた時、恥ずかしかったし情けなかった。 だから詳しくは教えてない。 何よりも同情されたくなかったんだ。 可哀想。辛かったんだね。 そんな言葉、全然慰めなんかじゃない。 俺にとっては残酷な慰めの言葉。 でも……もし俺の過去を知って…… どんな言葉をかけてくれるんだろうか。 アイツのこと、どう思うんだろうか。 やっぱり同情されるのかな。 探るように視線を合わせる。 相変わらず優しく微笑む楓さんだけど、瞳の奥は真剣な眼差しだった。 なんでだろう。 初対面なハズなのに…… 不思議と前から知ってる人みたいな、そんな暖かい感情が湧いた。 「……楓さん、」 気付いたら手をぎゅっと握り返して、口を開いた。

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