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俺と楓さんの過去(2)

開いた唇が震える。 『ァ、アイツは…っ… か、和哉っは……有名な病院の子供でした。』 久しぶりに呼んだアイツの名前にぎゅっと震える唇を噛む。 幼馴染だった野上和哉。 二度と会うことのない俺の大嫌いな幼馴染。 『俺の父は…… 物心つく前から和哉の病院に入院してたんです。 だからお見舞いに行くと必ず和哉がいて。 幼稚園は違うけれど、毎日一緒に遊んだりしてました。 だから父さんが死んだ時も一緒に、目が腫れるほど、泣いてくれて…… あの頃の俺は…っ… 本当に和哉が家族みたいな存在だった…っ…!』 当時の事を思い出し、目頭が熱くなる。 封印したはずの和哉との色々な思い出が脳裏に浮かんだ。 そして楓さんは俺の話を時より頷きながら聞いてくれる。 『小学校は和哉と一緒でした。 もちろん仲も変わらず良かった。 でも高学年になって、俺と和哉は性格も趣味も違う事に気が付きました。 和哉は医者になる為に勉強ばかりしてたし、たぶん友達も少なかった。 でも俺は逆に今とは違って活発だったし、友達も多かったと思います。』 そこまで話すと、ふぅと息を吐いて天井を見上げる。 すると楓さんが「大丈夫?」と心配そうに背中を擦ってくれた。 俺は小さくコクりと頷き、言葉を続けた。 『だから中学校に上がる頃にはもう……。 自然と遊ぶことも、廊下ですれ違っても話すこともなくなった。 でも中一の冬休み…突然母が再婚したんです。 まぁ当時は母さんが幸せならって受け入れたんですけど…っ…』 その再婚相手が最悪だった。 パチプロの無職でなんと3歳の子供連れ。 母さんとは交際してまだ一年だった。 『だから新婚どころかまだまだ恋人気分で…… 毎日のようにデート行ったり、週末には必ず旅行とか行くし…っ…!!』 拳を強く握りしめた。 父さんが亡くなって…… 母さんが俺たちの為に頑張ってくれてたのは知っている。 寂しくならないようにっていつも笑顔でいた母さん。 でも俺達が寝静まった後、一人遺影の前で泣いてた事を知ってるんだ。 だから一人でずっと寂しかった母さんの気持ちを理解してあげたいと思う。 だけど…… どうしても新しい父親として受け入れる事が出来なかった。 だって俺や瞬は仕方がないとしても自分が連れてきた子供を見る目がとても冷たいんだ。 それはまるで『邪魔だ』と言わんばかりの瞳。 だから俺が幼い二人を守らなくちゃって。 寂しい思いをさせないようにって…… いっぱい愛情を注いで今まで面倒をみてきた。 『でも家のことや保育園の送り迎え。 そして自分の勉強だったり……色々と精神的にきつかった。 クラスの奴らは部活したり放課後遊んだりしてるのに。 なんで俺ばっかりって。 でもそんな時にやっぱり俺を…… 助けてくれて支えてくれたのが、和哉でした。』 なのに今じゃもうこんなに名前を言葉にするのも嫌になる。 お前を思い出すことさえも。 でも当時は本当に救われた。 風の噂で聞いたのか「大変だろう?」って家に来て色々助けてくれた。 俺よりも料理が上手くて、洗濯たたむのが得意だったっけ? …あの時のことは今でも感謝してるんだ。 でもだからと言って、思い出を美化にするなどもう俺には出来ない。 「今、思えば和哉は…… あの日から少しずつ、変わってしまったような気がします。」

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