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半分こ (3)
俺も手を差し出すと「シィーだよ?」と一緒に逃げるように裏口へと向かう。
途中でいくつかある部屋のどこかやけに騒がしかった。
まさか……しょ、祥太郎じゃないよな?
ま、まさかっ、まだ蓮さんと……??
なんて不吉なことを考える。
無意識に手の力が入ると、楓さんも同じようにギュッと返してくれた。
なぜか不思議とそれだけで安心した。
✽ ✽ ✽
『送ってもらって、すみません。
……ありがと、ございました。』
俺のアパートから少し離れた所でお礼を伝える。
「ふふ。無事についてよかったぁ。
光のアパートって入り込んだ場所にあるから大変だったよ〜」
いや…たしかに無事は無事なんだけど、さ?
正直、楓さんの運転は危険すぎて死ぬか思った。
運転免許持ってない俺でも下手なのが分かる。
……もう絶対に二度と乗りたくない。
本人も自覚はあったようで「実はペーパードライバーなんだぁ」なんて笑顔で告白された。
だからその時はさすがの俺も大いに睨みつけてやった。
しかし能天気すぎる楓さんに俺の睨みなんて全く効き目はない。
むしろ無事に着いた事で「意外と運転の才能あるのかも。」なんて思ってるようだ。
だからそんな大きな勘違いで問題が一つ。
『あの……楓さん。
誰か迎え頼んだ方がいいじゃ……?』
「ええ?なんで〜?」
『いやっ……だって、それは、その…っ…』
……すみません。
楓さんの運転がめちゃくちゃ下手くそなので心配です。
なんていくらなんでもはっきりと言えやしない。
今、楓さんは自信に満ち溢れているのだ。
『来た道をまた運転して帰るのは大変じゃないですか……?
さっきは俺も一緒に注意してたから大丈夫だったけど……
あの、ほら……車に傷なんかついたら…っ…』
「ふふ。全然大丈夫だよ〜
普段運転する機会がなかっただけで、実は才能あるみたいだもん。
まず通って来れたんだからもう余裕だよ〜」
駄目だ。これは。
頬を掻きながらまた遠回しに聞いてみる。
『じゃ、じゃあ。
とりあえず祥太郎に連絡してみます?』
「えぇ〜なんで〜別にしなくていいよ〜」
『いや、でも…っ…っ』
「ふふ。優しいなあ〜光は。
そんなに僕のこと心配なの〜??」
覗き込んできたその顔は、やっぱり天使みたいだ。
もちろん天使なんて見た事もないけど、もしいるなら楓さんみたいな感じなのかな、なんて。
そんな事をふと思った。
「ふふ。ありがとうね?
でもここから車で10分ぐらいなんだぁ。
だから心配しないでよ。」
微笑みながらそう言うと、まるで子供をあやすように俺の頭を撫でた。
つい恥ずかしくなって顔を深く俯かせる。
〜〜♪
その時、楓さんのスマホが鳴ってビクッと体が反応した。
「……あっ!!
ちょっとごめんねっ」
そう俺に一言いって、スマホを耳元に当てた。
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