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半分こ (4)

「はぁい。もしもし〜」 軽い感じで楓さんが電話に出る。 もしかして……蓮さんかな? だったら迎え…… あ、てか祥太郎は大丈夫だったのか? ダメだって分かってるけど、つい心配になってしっかりと聞き耳を立てる。 「うん、分かってるよ〜。 うんうん。じゃあ詳細はあとで送るから〜」 どうやら電話の雰囲気的に蓮さんや祥太郎ではないようだ。 「心配しなくても大丈夫だってばぁ。 今、忙しいからバイバイね、望月さーん」 そう言うと一方的に電話を切ったようだった。 そしてチラッと俺の方を見ると、面白おかしそうに笑った。 「ふふ。今の電話ね? 光のお客さんからだよ〜」 『え?』 一瞬何を言われたのか理解出来ず、ぽかんとする。 だけど言葉の意味を理解した瞬間に首を激しく横に振った。 『ちょ…っ…ちょっと!か、かえでさ、ん! ま、ま、待ってください!!』 全身から血の気が引くのを感じる。 ……そうだった。忘れてた。 明日からさっそく仕事入れるとか言ってたっけ。 今までふわふわしてた展開がいきなりこの電話一本で現実味が増した。 『まだ働くって…… お、俺、言ってないです。 てかやっぱ無理、本当無理です、から。 そんな……俺なんかに…っ…』 「なんで?」 『……え?』 「なんで自分を自分で無理だって決めつけてるの? それって……自意識過剰じゃないかなぁ??」 楓さんが透き通った声で心底不思議そうな表情でそう尋ねた。 「てかさ?まず僕…… その俺なんかって言い方好きじゃないなぁ。 たしかに光は強い子じゃないかも知れない。 でも弱い子でもないよ? それに本当に無理か無理じゃないかは光が決める事じゃない。 少なくとも、僕と祥太郎は無理じゃないって思ってるんだから。」 楓さんの言葉が重りのようにのしかかった。 自分で無理だって決めつけてる… 自意識過剰… 俺が決めることじゃない… はっきりそう言われ、何も言葉が出てこなかった。 だって俺にはどうせ無理だって分かってるから。 友達だって自分から作ろうと思わない。 人の顔色ばっかりみて、上手く喋れないからって逃げてきた。 結局半分こにしてくれても俺が臆病者なのは変わらない。 過去を半分こにしたって俺はずっと縛られるんだ。これからも。 変わりたいなんて何度思った所で…… 結局俺は口先だけのヤツなんだよ。 そう頭の中で分かってるのに、自然と下唇を噛み締めていた。 『……っっ…』 やばい めちゃくちゃ今、泣きそうだ。

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