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俺の理解者 (2)

その声にビクッと体が反応した。 そして後ろを恐る恐ると振り返る。 そこには薄着の格好をした、弟の瞬が立っていた。 『…しゅ…んっっ…!』 目を見開きながら弟の名前を呼ぶ。 暗闇ではっきりした表情は分からないけど、少し怒ったような、哀しそうに見つめてる。 「……兄ちゃん」 もう一度だけそう呼ぶと、ただじっと俺を見つめていた。 『……しゅ、瞬?どうした?』 そう尋ねた瞬間、目をスッと細めて溜息を吐いた。 そして頭をダルそうにポリっと掻く姿は、俺の知らない瞬だった。 やべぇ… やっぱり怒ってるかな。 遅くなるって連絡入れるの忘れてたし……な。 『しゅ、しゅん……その、ごめん。』 そう謝りながら近寄ると瞬の方が先に大股で向かってくる。 さっきまで暗闇でぼんやりとしていた表情が今度はハッキリと分かった。 眉を深くシワを寄せ、その表情は明らかに怒ってる様子だ。 たぶん恐らく人生で一番とんでもなく怒ってる。 つい体が反射的に硬直した。 どんなに兄弟喧嘩したっていつも勝つのは俺。 だって瞬は優しい奴だから。 俺が100%悪くても絶対に怒ったり責めたりしない。 「兄ちゃんは何も悪くないよ」って逆に謝っちゃったりするぐらい。 ……なのに。 こんなにも怒りを表した表情を見たのは初めてだった。 これは本気でやばい、とつい目線を逸らす。 すると瞬が俺の目の前に立った。 まるで無言の圧力みたいな雰囲気が気まずくて今度は顔を俯かせる。 「……にいちゃん」 いつものの優しく俺を呼ぶ声に顔をハッと上げた。 するとそれと同時に手をグイッと引かれ、瞬の腕の中へと引き寄せられてしまった。 『…っ…! ちょっっ、瞬?どうしたんだよ。』 腕の中から尋ねるように顔を見上げると、瞬は全く違う所を見つめていた。 「……俺の兄に、何か用でしょうか?」 可愛いさの欠片もない今まで聞いた事もない低い声。 心臓の音が激しくなった。 『…っ…し、しゅん?』 驚きながらそう名前を呼ぶと目線だけを向けられた。 「……兄ちゃん。 今まで何してたの? 帰り遅くなるなら連絡ぐらいしてよ」 普段の優しいの声だ。 『……っ…ご、ごめっん』 でも何故か動かした唇が重く、震える。 見下ろされたその瞳はまるで汚物を見るような軽蔑の色を示す。 突き刺さるその真っ黒な瞳が怖くて、つい喉を鳴らした。 するとそんな俺とは正反対に楓さんが明るく笑う。 「もしかして光の弟ちゃん!? あ、どもども〜はじめまして〜!! 僕の名前は楓と申しますっ〜!!」 相変わらず天使のような笑顔を振りまいた。 しかしそんな天使の前さえ瞬の表情は未だ冷たく、険しい。 明らかに今日の瞬は様子がおかしかった。 『し…っ…しゅ、ん。 連絡しなくてごめんな?』 とりあえず心配かけたことを謝罪しなくちゃと瞬の服を引っ張る。 でも瞬の表情は依然として変わらず楓さんを見つめていた。

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