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俺の理解者 (4)
家の中に入った瞬間、さっそく口を開いた。
『瞬!!
さっきの態度は何だよ!!失礼だろっ。』
叱るようにそう言い放つ。
しかし瞬のヤツは俺と目も合わせず、さっさと部屋の中へと向かってしまう。
…はああ??無視!?
あからさまなその態度に腹が立ち、靴を雑に脱ぎ捨て後を追った。
『おいっ瞬!!聞いてるのか!!』
さっきよりも更にボリュームを上げて言い放つ。
しかし瞬は顔を背け、全く俺を見ようとしない。
むしろ表情がみるみると険しくなっていく気がする。
どうやら俺に対し、相当怒ってるらしい。
『……っ』
瞬から伝わる無言の苛立ちに言葉を詰まらせた。
た、たしかに…今日のことは…俺が悪い。
それは自分でも分かっている。
まずその事についてちゃんと謝らなくちゃ、と今度は弱々しい声が出た。
『……心配かけてごめん。』
そう謝るとチラッと俺に視線を向けたが、すぐに逸らされた。
そして足音を立てながら台所へと向かう。
そんな瞬の背中を追いかけながらボソボソと言葉を続けた。
『連絡しなかった事は本当に悪かったって思ってる…
言い訳になるけど、今日は色々とバタバタしててさ。
その……心配かけてごめん。』
そう言いながら瞬の袖を引っ張る。
『でも面接の事は隠してたとかじゃなくて、マジで急遽決まった事だから。』
しかし瞬は眉を顰め、俺の手をさり気なく払うように目の前の鍋に火をつけた。
そしてわざとらしく溜息を吐いた。
いつも仲良し兄弟とは思えないほどの不穏な空気がこの狭い台所に漂う。
『ご、ごめんってば…』
蚊の鳴くような声でもう一度謝る。
しかしやっぱり瞬からの返事はない。
気まずくて、つい顔を俯かせた。
ここまで怒ってる表情は珍しくて、正直どうすればいいのか分からない。
連絡せずに心配かけた事が許せないのか。
面接のことを信じてくれていないのか。
それともまた夜の仕事をしようとした事に怒っているのか。
どれにしても瞬の冷たすぎるその態度に胃がキリキリと痛む。
どうすればいつものの瞬に戻ってくれるのか。
『…っ…無視すんな、よ。』
そう呟きながら今度は強引に瞬の腕を掴んだ。
すると瞬の肩がビクッと反応し、大袈裟に顔を背けながら手をパッと払われる。
ガーンと漫画のように口を大きく開いた。
『しゅ、しゅん…っ…?』
ハンマーで頭殴られた気分だ。
払い避けられた手がじわりと痛い……
こ、これは……マジのマジの大マジ怒ってる。
『ご、ごめんってば。本当ごめんっ』
するとその時。
ポケットから携帯のバイブが鳴った。
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