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第18話

「ん、ん……そう……芳則……さんが欲し……」 「そうか、そうかい――! 波濤、僕もキミが欲しいよ。これからは僕がキミを守ってあげるから! あの龍なんかといるよりも、もっともっと贅沢な生活をさせてあげるよ! あんなやつより、何十倍もキミを満足させてあげるから――!」 「ああ……芳……則……」 「うん、うん、波濤――何だい? キミの為なら何だって厭わないよ! 何でもしてあげるよ! どこをどうして欲しい? ほら、言ってごらん。キミの色っぽい声をもっと聞かせてくれ――!」 「ん……あぁ……ッ、そ……こ……触って……もっと」  淫らな嬌声を上げながら、冰は心の中に愛しい恋人を思い浮かべていた。  ごめんな、龍――  でも分かってくれるよな? お前なら……。  どんな手を使ってでも生還してやる。生きてお前に会う為に――俺は諦めねえ……!  愛してるぜ、龍。  お前だけ。お前だけ――俺が心底愛してやまないのはお前だけだ、龍――――! ◇    ◇    ◇  こうして冰が高瀬に奪われんとしている、その少し前のことだった。  倉庫の外では大阪から急ぎ戻って来た氷川が、遼二と側近の部下を伴って帝斗らと合流していた。 「状況は――!?」  氷川が問う。 「はい、出入り口はこの階段上の扉と、荷物を出し入れする正面の大シャッターのみです。あとは天窓が数ヶ所ありますが、裏口はありません。」  帝斗と共に先に来ていた側近たちが機敏に説明する。 「中の様子は?」 「確認できておりません。ただ、確かに人の気配はします。先程から階段上の扉越しに確認しておりますが、話し声らしきが聞こえるのは確かです。雪吹様に犯人が話し掛けているのかも知れません」  ということは、冰はまだ無事でいる可能性が高い。だが一刻を争うことに変わりはない。氷川が思考を巡らせていると、帝斗と遼二に抱えられた紫月が逸った顔付きでやって来た。 「氷川オーナー!」 「紫月! すまなかったな。無事か?」 「はい、俺は平気です! それより中の状況を……!」  事務所内の詳細を唯一知り得るのは今この場で紫月だけだ。紫月当人もそれを分かっているから、なるべく詳しいことを伝えようと、睡魔を押して説明に来たのだった。

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