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 和やかな空気に包まれる玄関。  挨拶だけで終わるはずもなく話は盛り上がり続ける。玄関先の立ち話は終わる気配がなく、そもそも黙っていられるほど引っ込み思案でもない健斗は勇気を出して顔を上げた。江彦と紹介された男の子は健斗が俯いてる間も顔を上げた時もずっと健斗の顔を見ていた。  目が合うとにっこりと笑った江彦の手を健斗が握った。  向かい合って繋いだ手を軽く引く健斗に、さすがに江彦が待ったをかける。靴も履いたままだし、母親に聞かずには決められない。 「きみひこくん、いっしょにあそぼう?」 「きみひこ、でいいよ。よびにくいでしょ」 「じゃあ、ひこにする。おれだけのよびかた、どう? ひこ、いっしょにあそぼ?」 「うれしい、けんとだけのよびかた。うん、あそぼう。おかあさん、いい?」  いいことを思いついた瞬間の子供はとびきりの笑顔をする。江彦は健斗の笑顔を見て胸がきゅんとした。江彦と健斗が母親に確認すると、大人たちは慌てた。思いの外話し込んでいたことに今気が付いたらしい。結局夜も遅い時間だということでその場は解散になってしまう。  江彦が残念そうに健斗を見つめる。健斗悲しくて英一家が帰ったあと少しだけ泣いた。

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