11 / 34

9

 盛り上がったのはあの日だけでなく、毎日のように母親同士は行き来をして交流を深めていた。勿論子供も一緒に。そうして同じ幼稚園に通うんだからと、入園式まで一緒に行く約束をしてその日はあっという間にやってきた。  初めての制服はぶかぶかで健斗には大きいのは、江彦のように大きくなると言って聞かなかったからだ。嬉しそうな健斗をじっと見つめる江彦の顔も今日はいつもよりずっと表情が読み取れる。そしてそれを微笑ましく見守る父親たちと写真を撮る母親たちで入園式の始まりから大忙しだった。  健斗の入園と同時に仕事復帰する健斗の母親を江彦の母親はよく助けていた。江彦の母親はあまり体が丈夫でなく、外で働くのは諦めているらしい。せっかく友達になったんだからと健斗の世話も快く頼まれてくれて相沢家にとっても健斗にとってもとてもありがたい存在だった。  ただ少々過保護なところもあって幼稚園時代だけでなく小学生、中学生になってもそれは続くことはこの時誰も知らない。 「ほらほらこっち見て」 「カメラこっちよ、ほら見つめ合ってないでこっち」  きゃあきゃあ騒いで取った写真は大きな「入園式」と書かれた立て看板の前で健斗と江彦が笑うとっておきの一枚だった。

ともだちにシェアしよう!