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 それは江彦も認めるほど、慈愛に満ちたものだった。  健斗が家庭科部に入部したのには理由があった。それは江彦も知らない健斗だけの秘密だ。  健斗の運動音痴は江彦にレッスンを受けてもどうにもならない程ひどいものだった。出来れば一緒に野球部で頑張りたいと、どちらも思っていたけれどそれは夢のまた夢だと互いに気付くほどひどかった。  中学は部活入部が必須だったので、健斗は悩んだ。美術部と家庭科部と将棋部……どれの部もきちんと体験入部を済ませ、消去法ではあったけれど家庭科部に入部することにした。料理も裁縫も、今までしたことがないけれど、それでも家庭科部を選んだ。

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