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女子の多い部活に江彦はいい顔をしなかったけれど、いくら聞いても健斗は家庭科部を選んだ理由を教えなかった。暫くの間江彦は拗ねていたけど、健斗の頑固が勝った。
家庭科部に入って健斗が料理上手になると江彦の家に行かなくなると思ってたのかもしれない。時間をかけて誤解を解けば、ちゃんと応援してくれるようになった。
料理は相変わらず下手くそだけれど今となっては橘がいて毎日こうしていろいろ教えてもらえる家庭科部が、健斗は大好きだった。
「先生、なんでこう毎回毎回晩ご飯のおかずみたいなメニューなんですか」
「この前はカレーだったし…今日なんて麻婆豆腐ってこれじゃ彼氏にプレゼントも出来ないです」
不満そうな女子部員に囲まれる教師を見て、健斗も少しだけ胸が痛んだ。おかずのようなメニューがいいと希望を出したのは健斗だったからだ。でも決めたのは公平にじゃんけんだったんだから、健斗は何も悪くない。ただ、ものすごくじゃんけんが強いだけだ。
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