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「最後に水溶き片栗粉を入れてよく混ぜてね。とろみがついたら完成。じゃあ、皆も完成させて試食しましょう」
橘の麻婆豆腐は豆腐が崩れることもなく、レストランで出てくるものと変わらない出来栄えだった。仕上げにかけたネギの小口切りが映えていて、花椒の香りが湯気と共に健斗の鼻をくすぐる。学校の調理室の食器すら、高級なものに見える。
健斗のお腹が大きく鳴って皆が笑った。恥ずかしいけれど、よくあることなので慣れてしまった。早く完成させて試食しようと意気込んだ。
料理は少なく作る方が難しいと教えてくれたのは橘だった。大雑把な健斗に見かねての言葉だったんだとは思うけれど、一人分と十人分、小さじ半分でも塩の量を間違えたら食べられないのは少ない方だ。勿論それを学んだのも、この家庭科部でだった。
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