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 辛いものが好きな江彦のために、健斗はいつになく真剣になる。母親が仕事で遅くなる時はいつも江彦の家でご飯を御馳走になっていた。あの美味しさには敵わないけれど、一生懸命作った麻婆豆腐は特別だと思いたい。  片栗粉の沈殿したカップをかき混ぜて、完成間近の麻婆豆腐に流し入れたその時だった。 「アチッ」  健斗は熱さに慌てて手を引っ込める。なんとか根性で火だけは消したものの水溶き片栗粉の入ったカップはからんと音を立てて床に落ちた。熱かった手を見てみると、中華鍋の取っ手の形に赤くなっていた。片栗粉を入れるのに夢中で、中華鍋の取っ手に触れてやけどしてしまったらしい。

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